いま最もアツい投資テーマの一つ、「農地投資」を考える その4 生産性の向上を支える未来の技術


これまで3回に分けて農地投資の特長、魅力について紹介してきた。

第1回では農地投資の特徴、一般的な不動産投資との共通点および農地投資独特の点について紹介、第2回は農地投資の魅力の一つとして、株や債券などの伝統的な資産クラスとの低相関性、ひいては景気循環性の低さを説明し、農地は基本的にどんな経済状況であっても堅調に推移していることをお話しした。

前回の第3回では今後の農地投資の動向を需要および供給の両面から分析した。人口増加や中間所得層の増加で、今後も引き続き食糧需要が増すと考えられる中、耕作可能農地面積には限りがあり、供給がひっ迫する可能性について取り上げた。

第4回となる今回は、この「供給のひっ迫」を解決するために足元、そしてこれから普及していくであろう技術、いわゆる「アグリテック」についてお話しする。

食料供給を支えるモノ

有史以来、人類は常に食糧不足と戦ってきた。不安定な狩猟採集から始まり、より安定的な食糧供給を目指して農耕生活へと変わっていった中で、食糧を求めて移動を繰り返す生活から、定住へと暮らしも社会の在り方も変わってきた。

しかし、その後も飢饉やそれに伴う飢餓、虫害、水不足、天候不良、疫病など、多くの難局を人類は知恵と努力で対処してきた。この「知恵」には農機具の改良や農法の改善という古代より繰り返してきた努力から、灌漑施設の整備、化学肥料、農薬の開発、品種改良、遺伝子組み換え作物の研究などより近代的な科学技術の応用まで範囲は広い。

そして現在、人口爆発、気候変動など多くの困難に直面している中で、食糧需要を満たす必要性に迫られている。求められているのは単位面積当たりの生産性の向上である。

「生産性の向上」には以下の2つの方法が考えられる。

・アウトプットの向上:単位面積当たりの収穫量の増加

・インプットの削減:単位面積あたりにかかる肥料、水資源、労働力の減少

このブログでは上記の2つの側面から、「生産性の向上」をもたらすアグリテックについて簡単に紹介する。

アグリテックによる生産性の向上

・アウトプットの向上:単位面積当たりの収穫量の増加

まずは、アウトプットの向上からみていこう。

下記は、農地からのアウトプットの向上を可能にする技術の一例だ。

ゲノム編集技術

本来、その作物が持っていない遺伝子を外部から導入する従来の遺伝子組み換え技術とは異なり、ゲノム編集技術では、元の個体のゲノムに変異を誘導することで作物の特性を変える技術である。近年CRISPR Cass9技術などが注目されている。この方法によって、作物の疫病への耐性を高めたりすることができるようになる。また、発芽期間や実用化(市場での販売)までの期間を短縮することも可能となる。

自動運転可能な農業機器

トラクターやコンバインによる収穫、そのほかの農作業を自動化することを通じて収穫時のロス(収穫物を痛め、出荷できないような状態)を軽減することができるようになる。農業危機にカメラおよびセンサーなどを搭載することによって作物の状態を特定し、機器の設定を自動的に最適なものに修正することで、収穫時におけるロスの削減が可能となる。また、収穫スピードを制御することによって各作物に合わせて最も適した加減で収穫作業を行うこともできるようになる。

リモート・センサーの活用

前述のセンサーに関連して、リモート・センサーや衛生機器、航空機、ドローンなどを用いて遠隔地から作物、土質、家畜その他農業関連情報を収集し、リアルタイムで膨大な情報を収集、処理、分析することでより迅速な意思決定や作物のパフォーマンスの最適化が可能となります。

 

・インプットの削減:単位面積あたりにかかる肥料、水資源、労働力の減少

次に、農地へのインプットを削減することに寄与する先進技術などを紹介する。

農地の局所的な状況の把握度を高め肥料等の使用量の最適化を図るIoT技術

農地における過去の収穫実績や土壌養分、pH数値などをマッピングし、その関係性を分析。分析結果をトラクターの制御パネルに組み込むことで自動的にインプットの導入量を調整・最適化します。

当最適化を行うためには、ドローンなどを通じて農地状況の詳細を把握し、その後各区画における過去の収穫高を入力し、ソフトウェアを用いて分析することで、区画ごとに最適な肥料を判定することができる。

ロボットの活用

機械学習や人口知能と農業を組み合わせることによって労働集約的だった作業を自動化することができる。収穫や収穫物の加工、包装、雑草除去、作業の一元化、作付けや搾乳などの単純繰り返し作業をロボットによって代替させるのだ。ロボットの活用によるコストの削減、安全性の向上、リスクの除去などは直接的な恩恵がある。

人工知能の活用

農業分野において、人口知能は天候予測などに役立てられる。悪天候や害虫・病気の蔓延などは直接・間接的に収穫高に影響を及ぼすものだ。人口知能を用いて最新の気温、雨量、風速、風向、日射量などに関する分析を行うことで、迅速な意思決定をサポートすることができるようになる。また、病気およびその蔓延度合いの特定、害虫の蔓延予測を行うこともできる。

このほかにも、有用なアグリテックはいくらでもあるのだが、あまりにも本業に絡んできてしまうので、ブログではこの辺にしておく。より情報が公にできるようになったら、また改めて紹介したい。

上記のような農業技術の導入によって、人類は来るべき人口増加、食糧需要に対応することになる。

このようなアグリテックを整備することによって農地の生産性は向上し、収穫高が大きくなれば、それだけ農地としての価値も高まる。農地投資においては、農業技術の導入状況、将来的な導入の必要性および可能性などをみて、優良な農地を選別して投資を行い、将来にわたって高位なインカム収入およびキャピタル・リターンの獲得を目指すのが、農地投資だ。

まだ、日本での顧客層は機関投資家が中心となるが、今後リテール(個人投資家)にも販売網が広がる可能性がある。今後の動向には要注目の資産クラスである。

推奨株の動向アップデート

グロース株 推奨日株価 直近株価 騰落率
ロング推奨
任天堂(7974) 46,840 58,200 +24.25%
ソニー(6758) 6,706 7,753 +15.61%
スクエアエニックス(9684) 4,490 6,890 +53.45%
バリュー株 推奨日株価 直近株価 騰落率
ロング推奨
ナガセ(9733) 5,400 5,850 +8.33%
ショート推奨
ルネサンス(2378) 1,051 920 -12.46%
セントラルスポーツ(4801) 2,498 2,301 -7.89%

トランプ大統領のコロナ感染を受けて、金曜日に日経平均は大きく下落。ロング推奨銘柄は下落したとしてもこれまでの上昇幅がクッションとなって、ほとんど影響なし。ショート推奨銘柄はすぐに2桁近くのマイナス幅に落ちる展開。

最後に本の宣伝

「コロナ・ダイエット」という本を出版しました。キンドルのアプリがあればスマホ、タブレットなどでお手軽に読めますので、興味ある方はぜひ。

『コロナ・ダイエット』の詳細はこちら


Subscribe
更新通知を受け取る »
guest

CAPTCHA


0 コメント
Oldest
Newest Most Voted
Inline Feedbacks
View all comments