コロナと投資1


コロナの感染被害拡大が続いている。連日何人感染しただの、亡くなっただのと気の滅入る報道が続いている。対岸の火事としてみていた欧米でも感染被害が自国でもでたことで、いよいよ世界的な問題へと発展してきている。そのような中、自分の仕事としてはコロナそれ自体よりもコロナの感染被害拡大による、金融市場の下落のほうが死活問題である。特に3月に入ってからは、お客からの問い合わせも激増しており、今後の市場経済への見通しだの、投資商品の先行きだのと誰も答えを知らない質問への対応に追われている今日この頃である。今回の投稿では仕事とは切り離して、今回のコロナ騒動と投資について私見を述べていきたい。といいつつ、例によって内容が長くなるので、まずは今起きている状況について振り返ることから始める。

 

高いのはみんな知っているけど、特に下げる要因もなかった株式市場

ここでは特に米国株式市場の話が中心ではあるが、日本も含めほかの株式市場でも通ずる話を書いていく。

懸念していたほど景気が悪化しなかったこと、FRBや各国中央銀行が金融緩和スタンスを保ったことなどを背景に2019年も株式市場は上昇トレンドを継続した。リスク要因として考えられていた、米中貿易摩擦問題と英国のEU離脱問題も年後半、特に10月ー12月期には進展し、多くの人が懸念したような悲観的なことにはならないだろうとの見通しから株式市場は上昇基調を継続、投資家心理も強気であっただろう。

そんな中で始まった2020年。

年初にその年の見通しや展望を書くのだが、内容は概ね強気スタンスの継続だった。米国大統領選挙やイラン情勢(もはやだれも覚えていないだろう)、米中貿易交渉など政治リスク、地政学的リスクはあるものの、米国経済は堅調で雇用統計も強い結果が続く中、インフレ率は低いまま、という地合いの良さが2020年も継続しているというトーンであった。株式市場は年初から上がっており、みんなちょっと上がりすぎ、割高感みたいなのは感じたいたので、どこかで調整(下げに転じる)が入るとは考えられていたが、年を通してみれば今年も緩やかに上昇するだろうという見方が大勢であった。特に下げに転じるような大きな要素が見当たらなかったのが2020年2月中旬までの世界経済であっただろう。

状況が一変するコロナの報道

2月の終わりに、聞きなれない言葉が報道されるようになる。「新型肺炎ウィルスが中国の武漢で出た」との内容だ。この時はおそらく多くの人は「まーた中国が何かやらかしたのか」程度の認識だったのではないだろうか。

株式市場もご挨拶程度に下がったが、すぐに戻る。こういう時は市場の変動が激しくなるのはお決まりなので、まだどこか「中国での出来事」感があったのではないだろうか。

上から目線で偉そうに話しているが、基本的に自分自身の当時の心境を振り返っていると思ってもらえればと思う。

数日のうちに今回の騒動がただの「中国での出来事」ではないことがわかってくる。日本を含めほかの国でも感染者が出てくる、死亡者が増える。だんだん「おいおい、やばいんじゃないか」というトーンが強まってくる。

それでも、まだ大きくは動かない。特に欧米は地理的に中国から離れていることもあって、まだ実感に乏しかったのかもしれない。

3月に入るととうとう欧米にも被害が出始める。そうしたら、あとはジェット・コースターである。一気に落ちる。そもそもが「株式市場高いな~」と思っていたところだったので、ある意味待ちに待った「売り時」、「下がる材料(ネタ)」が出たという状況だったのではないだろうか。売りが売りを呼び、下げが拡大していく。時々中央銀行からの介入があったりして申し訳程度に上がるけれど、またそれ以上に下がる。特に3月に入って「対岸の火事」だと思って、様子見姿勢であった欧米でも被害が拡大したことでとうとうダムは決壊した。

大暴落をけん引するのはETFの解約およびアルゴリズム

今回に限った話ではないが、過去最大級の大暴落をけん引するのはETFの解約と高頻度取引のアルゴリズムである。

ETFとは広く多くの銘柄を分散して買っていくような投資商品である。真新しい商品というわけではないが、ここ10年くらいでかなり存在感が強まってきた商品である。インデックス型のETFもあれば、テーマ型ETF(5G関連の銘柄だけ買うなど)もあるが、とにかくETFの解約(現金化)が起きると、現金を作るために株を売らなくてはいけない。これによって一見コロナの関係ない内需株(事業収益の大半が国内事業からであるような企業の株)も大きく値を下げる。そうするとそういった株を持っている株主は焦る。自分も早く売らないともっと価格が下がってしまう。これが売りが売りを呼んでいる。

もう一つは高頻度取引のアルゴリズムの発動である。

金融映画に出てくるような敏腕トレーダーが自身の相場観でトレーディングするなんて言う時代は過去のもの、もちろん人間のトレーダーも活躍しているが、今はアルゴリズムを組んで、感情を完全に排除してルール通りにたんたんと売買を執行していく高頻度取引が台頭している。「高頻度」というくらいだから、こういったプログラムは0.1秒間に何千何万という取引をひたすら実行していく。「ルール通りに」と書いたが、ここで重要となるのが「ルール(アルゴリズム)」である。例えば株価がXX%下落したら、とにかく「売り」注文を出し続けろというようなアルゴリズムが組まれる(簡単な例にしているが実際はもっと複雑なルールである)。そうすると今回のような下げが起きるとこのアルゴリズムが発動、0.1秒、0.01秒単位で膨大な取引が自動的に実行されていく。人間の判断、取引実行の時間などとは比べ物にならないレベルの速さ、量の取引が淡々と実行されていく。こうなるともうただ見守ることしかできない。

連日「過去最大の下げ幅」の「過去最大」を可能としているのは、このようなアルゴリズムなのである。

限られて資金で個別銘柄を買って分散化を図るよりも、一層広範な分散を可能にしたETF、そして人々の投資活動を大きく改善させたフィンテックの申し子である高頻度取引が皮肉なことに市場の大暴落に拍車をかけるといった事態となったのである。

長くなったので、今回の騒動に関する私見は次の投稿に譲ることにする。


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