コロナと投資7-2 不動産投資に関する立地分析


前回不動産投資と伝統的資産(株・債券)の投資との違いと、札幌の不動産事情について考察を述べた。

前回
コロナと投資7-1 たまには不動産投資の話

今回は、「資産性を考えた投資地域の選定が重要」という観点から不動産投資を考える上で重要となる分析項目について考えていきたい。分析といっても、想定利回りがこのくらいで、路線価があのくらいで、とかそういうことではなく、あくまでマクロ経済分析、トップダウン分析である。細かい不動産投資に分析に関しては投資本が腐るほど出ていると思うのでそちらを参照してほしい。ローンに関しても金融機関によって千差万別なので、画一的に言うことはできない。

このブログではあくまでマクロな視点から、不動産投資に関する立地の重要性に関して考えていく。

サマリー

・不動産投資とは立地への投資である

・人口動態を分析する

・「よっぽどのこと」を分析する

不動産投資とは立地への投資である

どこのだれが最初に言ったのかわからないが、「マクドナルドは飲食業ではなく不動産業である」というのは立地の重要性を示す、非常に重要な格言である。

オーセンティック・バーガーではなく、マクドナルドのあのハンバーガーが何で世界中でこんなにも良く買われ、食べられているのか。それは味でもおしゃれさでもなく(失礼)マクドナルドの立地が非常に良いからである。基本的に駅近、もしくはショッピングセンターの中など、人が集まりやすい、それもマクドナルドを好む人が多いところには必ずといっていいほど、マクドナルドがある。マクドナルドがすごいのはその立地戦略である。

マクドナルドなど、飲食店に限らず不動産投資はほぼ立地がすべてであると考える。どんなに豪華絢爛なタワマンでも駅から徒歩20分ではまず人気が出ないだろう。だったら、駅から徒歩5分の普通のマンションのほうが利便性が高いと考える人は多いだろう。駅だけでなく、学生であれば大学から近い、遊ぶところから近い、社会人であれば、会社までの交通の便が良いところなど、「立地」といっても「立地の良さ」の切り口は多様である。

お金で買えない・変えられないのが立地

居住用不動産にせよ、商業用不動産にせよ、なんにせよ立地が重要なのは、立地だけは投資後お金で変えられないからである。物件の内装も外装も、設備も、間取りもやろうと思えばお金をかけて改善することはいくらでもできる。物件自体の改修・改善で賃貸人を惹きつけ、空室を回避することはできる。

ただし、立地だけはどうしようもない。何百、何千万金を積んだところで、物件は動いてはくれない。駅近にすることはできないのだ。だから、極端な話ぼろ屋でも何でも物件の状態はなんでもいいから、立地の良い不動産を買うことが最優先課題にして最重要課題であると個人的には思う。立地はプライスレスである。

人がいなくては意味がないのが不動産

不動産は自分のためにお金を払ってくれる人(賃貸人、物件の購入希望者)がいて初めて、収益化できる。したがって、人がいない、人を惹きつけられない場所に不動産を持ってもあまりというか全く意味はない。少子高齢化、人口減少、そして足元のコロナによるニューノーマル(これまでとは違う新しいライフスタイルが常識化してくこと)を踏まえると、より一層、人がいるという意味での立地が重要となってくる。

人口動態を分析する

 

ということでここでは、札幌市、東京(世田谷)、京都市の3例を用いて、それぞれの人口動態をみていこう。

北海道札幌市の人口増減予測

上記は北海道札幌市全体の人口増減予測である。こちらをみると札幌市全体では2025年に人口増減はプラスマイナス・ゼロとなり、その後は徐々に人口減となっていることを示している。流動性の低さも踏まえると不動産投資は長期投資となる可能性が高いので、長い目でみたときに人口減となることは好ましくない。

参考までに東京都(世田谷区)と京都市もみてみよう。ちなみに東京の世田谷と京都を選んだのは単に僕が好きな街だからである。他意はない。ブログの最後に今回使ったデータ・サイトのリンクを貼るので、自分の気になる都市で人口動態をチェックしてみよう。

世田谷区は2040年ごろまで人口増が見込まれているようだ。その後は生産年齢人口の減少を受けて、人口減に転じるとの予想だ。東京都世田谷区においても将来的な人口減は避けられないがその減少率は非常に低い。

最後に京都市である。

京都は長らく人口増減がほぼなかったようであるが、2020年以降は人口減がみこまれている。年少人口および生産年齢人口の両方が20年にわたってほぼマイナス成長であることが興味深い。

このようにみていくと、東京の世田谷区が最も投資妙味があるようにみえる。札幌市も京都市もすでに人口減に直面しているのに対し、世田谷区は少なくとも向こう20年はその心配がないとは言わないまでも低い。

地方は終わりか?もう少し詳細をみてみる。

札幌市といっても範囲が大きい。札幌と聞いて多くの人が連想する、時計台や赤れんがテラスなどはすべて札幌市中央区の中にある。では、札幌市中央区の人口動態はどうだろうか。

だいぶ状況が異なることに気づくだろうか、2040年まではプラス圏で推移し、人口減少が見込まれるのは2045年まで先延ばしされた。人口動態の様子は世田谷区と同じである。

京都市も範囲が広い。京都市は全域に寺社仏閣が点在しているので、どのような範囲を絞りこめば良いか難しいが、京都市では田の字地区と呼ばれる地区が不動産市場においては最も優良であるといわれている。田の字地区とは御池通、河原町通、五条通、堀川通で囲まれた範囲のことを指す。京都の町は碁盤の目なので、この4つの通りで囲まれる地区が田の字型であることから田の字地区と呼ばれる。区でいうと中京区と下京区が含まれる範囲である。

こちらも人口減が顕著化するのは2040年からであり、それまではプラス圏で推移している。2030年まで生産年齢人口増がみられるのも、この田の字地区の魅力であるといえるだろう。

地方の衰退や東京一極集中などといわれて久しいが、このように地方をみていくと、印象が大きく変わるだろう。人口動態をしっかりみれば、東京以外にも投資妙味のある都市はあるといえる。

相対価格をみてみる

地方でもプライム立地にエリアを絞れば人口減少による影響が限定的であることが分かった。では、各地域の不動産価格はどうなのだろうか。下記は各地区における公示地価平均および坪単価平均である。

 

まず、一目見て思うことは京都がめちゃくちゃ高いことである。これだけみると予算にもよるが京都は投資対象から外れる。ただし、これには地域性があるので注意が必要だ。

京都の田の字地区は、京都市の中でも中心街である新京極や寺町通、高島屋や大丸などの商業地区・ビジネス地区を多分に含むために、住宅街中心である世田谷区と比べると当然地価は高く出るだろう。東京で比べるなら渋谷区や新宿、もしかしたら銀座などが適切だ。決して単純比較をしてはいけない。

そう考えると、札幌市中央区は割安だ。札幌市中央区も大通り公園やすすきのなど主要な観光スポットやビジネス地区を含むのに地価は今回比較した中だと一番安い。ただし、こちらも中央区といってもかなり西側の山間部も含んでいることには注意が必要だ。

このように市区町村レベルでみてもまだまだ、単純比較はできないし、実際の不動産価格は築年数なども当然価格に影響を与えるので考慮が必要だ。しかし、これまでみてきた通り、人口動態や地価を確認するとそれぞれの良し悪しがみえてくるだろう。最後は各不動産勝負だが、その前にマクロな知見を持っておくことは重要である。

「よっぽどのこと」を分析する

最後に前回のブログで言及した「よっぽどのこと」を確認しよう。前回「よっぽどのこと」としたのは、下記のようなものだ。

さきほど「よっぽどのことがない限り」と話したが、この「よっぽどのこと」には例えば、買った不動産が欠陥住宅だった、自然災害(放射能汚染など)等でその不動産またはその地域が住めない、もしくは住むのに適切じゃない状態になったなどが挙げられるだろう。可能性としてはゼロではないが、株価が10%、20%下がることに比べたら可能性は「低位」といえるだろう。

自然災害の予想は正直なところできない。いつどこで何が起きるかを正確に予想することはできないからだ。ただし、各市区町村などが発行しているハザードマップをみることで、その概要をみることができる。ハザードマップとは、自然災害による被害を予測し、その被害範囲を地図化したものである。

札幌市中央区(想定最大震度)

札幌市中央区(液状化危険度)

いずれをみても、中央区の都市部(札幌駅周辺)は自然災害に対する耐性が高いといえるだろう。

世田谷区(地震防災マップ)

世田谷区も多摩川沿い以外は大きな揺れは心配しなくてよさそうだ。

京都市中京区

京都市下京区

札幌や世田谷に比べると地震に対する耐性が低い。自然災害に耐えられるように耐震性のある不動産に投資するなど、物件選定の参考とするべきだろう。

もう一度「資産性」を考える

これまで2回に分けて、不動産投資に関して考えてきたが、前回も冒頭で話した通り、株式投資になくて、不動産投資にある醍醐味は不動産投資で得た物件は自分のものになるということである。将来そこに住んでもいいし、改築、改修して貸し出し続けても良い。用途を変える不動産開発だってできるかもしれない。

そういう資産性があるのは非常に魅力的だ。これまで人口動態を中心に立地の重要性を考えてきたが、立地に関する最も大事な観点は、自分がそこが好きか、そして良く知っているかということである。

良く知っている地域であれば、人口動態以外にも治安であったり、周辺環境、利便性なども分かるだろうし、好きなところであれば、こういった分析や実際に現地調査したりするのも苦ではないだろう。

将来住むのも楽しみになれるのも不動産投資の良さではないだろうか。

あくまでここに書いたのはマクロ分析であって、実際の不動産投資にはもっと物件分析の手法もあるだろうが、結局最も大事なのは立地であると思う。表面利回りだのなんだのいろいろ考えたところで、結局すべての根源は立地だ。優良物件とは優良立地であることは常に頭に入れておくべきだろ。

人口動態データ

土地価格データ

札幌市 ハザードマップ

世田谷区 ハザードマップ

京都市 ハザードマップ


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