こんにちは。
頑張って週次ペースで記事を書いていこうなんて思いながらも、なんだかんだに忙しい日々を送り、体調も崩し、花粉症シーズンへと突入するなど何かと逆風の強い日々を過ごしております。
とりあえずは例年年度末は多少なりとも仕事もスローになるはずなので、3月は少しゆっくりしつつ(当社比)、こちらにもより頻繁に顔を出したいと思っている今日この頃です。
さて、金融市場は1月は非常に良い滑り出しをみせ、多くの投資家にとって明るい展望が見え始めたところでしたが、2月に入ると一転またまた下落トレンドになっております。
釈迦に説法ではありますが、理由としては下記の3点でしょう。
・1月の雇用統計がなかなかに強かったこと
・CPIの内容も市場予想を上回ったこと
・FRBにより利上げペースがまた加速するとの懸念
今更一個一個解説はしませんが、要は短期金利はもう少し上がるんじゃないかとの不安感や利上げが一層進めば米国経済は深刻なリセッション入りするんじゃないかという恐怖感のダブルパンチで金融市場は下落しているわけです。
ただし、リセッション入りするとの懸念が強まると本来であればリスク・オフで買われる長期の米国債(米国10年債)も売られているところが謎なところではあります。長期金利(米国10年債)は昨秋ごろに記録した4%台にはもうならないだろうとの見方が年始は強かったですが、今やまたまた3.95%まで上昇しておりますので、来週には4%の大台にまた乗るかもしれませんね。
ということで諸々のリスク要因を受けて、金融市場は下落しているわけですが、当ブログではずっと言い続けておりますが、今年は下げの年なので、ガンガン仕込んでいく時期であると言えます。
インフレの今後の推移やFRBの動きは誰にも予想はできませんが、今年の半ばまではおそらく利上げが続くだろうとの見方が今は強いので、5月、6月までは変動の大きい市場環境が続くと予想されます。
前回の記事で今年は(実は)グロース株のほうがパフォーマンスが良いという話をしましたが、リートや高配当ETFなどいずれも魅力的な配当利回りを示しておりますし、市場全体が下げている局面での仕込みを通じて、中長期的にはキャピタル・ゲインも狙うことができます。
今回はバンク・ローンETFに焦点を当ててみたいと思います。
FRBが今後も利上げをすることによる恩恵を受けるバンク・ローン
以前にも少し触れましたが、もう一度バンク・ローンという資産クラスについて簡単に説明します。
バンク・ローン、もしくはレバレッジド・ローン、シニア・ローン、BSLなんていろんな呼び方がありますが、銀行の買い付けるローンのことを言います。銀行はローンを組成したら速攻で市場で売却(転売)してさっさと融資額の回収を行います。そうすることによって銀行はまた別の企業に対して融資ができますからね。
バンク・ローンの特徴としては下記のものがあります。
・発行体(ローンの借り手)は一般的に非投資適格企業(信用格付けがBB+以下の信用リスクが高い企業)
・ローンの返済金利は変動金利
・担保付きで発行
・同じく非投資適格企業が発行する債券であるハイ・イールド社債よりも値動きが限定的
・大体数年で償還(借り換え)が起きる
ではこのような特徴における投資家のメリット・デメリットは何でしょうか。簡単に下記のような表にしました。
特徴 | メリット | デメリット |
信用リスクが高い | 利回りが高い | デフォルトリスクが高い |
変動金利 | 金利変動リスクがない | 金利低下時に不利 |
担保付きで発行 | デフォルトした時の回収率が高い | デメリットなし |
値動きが限定的 | キャピタル・ロスが限定的 | キャピタル・ゲインが限定的 |
数年で償還 | ― | ― |
といった感じでしょうか。最後の「数年で償還」ということに関しては、厳密にはメリット・デメリットありますが、長くなりますし、バンク・ローンETFの投資家にとっては特に気にする必要のない特徴かなと思いますので、省略しました。
バンク・ローン投資が足元、そしてこれからの市場において良いと考える理由は、利回りが高いことと、金利変動リスクがない(金利上昇時に恩恵を受ける)ことにあります。
利回りが高い
私が買っているSLRNは現在配当利回りが7.0%を超えております(2023年2月24日時点)。しかもSLRNは毎月配当なので、投資額×7%÷12を得ることができます。巷で人気のFIREにうってつきの銘柄ですね。
金利変動リスクがない
また、バンク・ローンは変動金利なので、金利上昇による悪影響がありません。なんで金利が上昇すると投資に悪影響なのかは、説明がめんどくさいので省きますが、債券投資であれば金利が上昇すると債券価格が下がり、投資としてはキャピタル・ロスが発生します。しかし、バンク・ローンは変動金利なので、金利が上昇するとむしろ投資家としては金利収入が増えてプラスに働くわけです。
「バンク・ローンは変動金利」ってそもそもどういう意味や?という人もいるかもしれませんので、「利払いが変動金利」とはなにかということを簡単に説明します。
バンク・ローンの金利は「基準金利+クレジット・スプレッド」で決まります。基準金利というのはLIBORまたはSOFRというオーバーナイト(1日だけ)でお金を借りるときの金利です。このLIBORまたはSOFRに発行体ごとの信用リスク(借金を返済できないリスク)を加味した上乗せ利回りが乗って、金利が決定します。
当然、信用リスクが高いほど上乗せ金利(クレジット・スプレッド)がのることになります。このクレジット・スプレッドは発行時に決定されるので、以後固定の上乗せ金利が基準金利にのることとなります。
これだけいうと、「なにが変動金利なんだ?」って思われそうですが、バンク・ローンはこの基準金利の部分が四半期とは半年とかでリセットされ、その時点における金利が適用されることになります。
なので、例えば3か月に1回金純金利の見直しがあるとして、この3か月間のうちにSOFRが4.0%から4.5%に上昇したら、企業が支払う金利も4.0%+クレジット・スプレッド(固定)だったのが、4.5%+クレジット・スプレッドに上昇するわけです。投資家としては、金利の上昇に伴って、金利収入が増えるので、「金利上昇によるリスクがない」ということになるわけです。
そして、最後にこの基準金利(LIBORやSOFR)というのは、短期金利に連動します。短期金利というのはまさしくFRBが利上げによって上昇する金利のことです。より厳密にいうと、FRBが利上げするといったときに金利が上がるのはフェデラル・ファンド・レートと呼ばれる政策金利ですが、この政策金利が上がる→短期金利(米国3か月物金利など)が上がる→基準金利が上がる、という感じで連動して上昇します。
なので、FRBが今後も利上げを継続する(長期化する)とか、利上げペースが加速する、とかいう報道があると、債券や株の投資家にとってはバッド・ニュースですが、バンク・ローンの投資家にとっては朗報となるわけです。
この辺の議論は以前の記事でも書いておりますので、そちらもあわせて参照してください。
良いことづくめのようにみえるバンク・ローン投資ですが、もちろんリスクもあります。
バンク・ローン投資の最大のリスク
先ほどから金利が上昇すると、投資家としてはもらえる金利収入が増える、という話をしましたが、逆の立場にたって、発行体(ローンの借り手)にとっては、金利支払いの負担が増えることを意味します。
金利が払えるのであれば問題ないですが、もちろんもともと信用リスクが高い企業への貸し付けなので、金利が上昇してくれば、払えなくなる、つまりは債務不履行(デフォルト)する発行体も出てきます。デフォルトするということは、貸した金が返ってこないということです。そうなれば投資家としてはキャピタル・ロスが発生することになります。
メリット・デメリット表で「担保付きなので、デフォルトした時の回収率が高い」なんてお話をしましたが、そんなのは気休めみたいなものであって、デフォルトしないに越したことはありません。そういう意味で、金利が上昇時はデフォルトが発生しやすくなる、ということには注意が必要となります。
また、デフォルト・リスクに比べたらかわいいものですが、バンク・ローン投資はそこまでキャピタル・ゲインを期待できる投資対象ではありません。良くも悪くもバンク・ローンの価格は平常時であれば大体95~105以内で推移するため、大きく値下がりもしませんが、大きく値上がりもしません。
ただし、もちろんデフォルトするかもしれないというような銘柄であれば価格は80以下、60とか40とか0にどんどん近づいていきます。
今後も利上げ(=金利上昇)が続けば、バンク・ローンの中でもデフォルトが発生する蓋然性は高まっていくといえるでしょう。
だからこそのETF
そもそも個人投資家はバンク・ローンを銘柄単位では買えませんので、直接的にデフォルト・リスクにさらされることはあまりないかと思います。
SRLNなどETFを買うことによって広く信用リスクを分散することができ、仮にいくつかの銘柄でデフォルトが起きたとしても、ETF全体でみたら大した悪影響はないよね?というような状況にすることができます。
そういう意味で、ETFは非常に分散効果が高く、個別銘柄のデフォルト・リスクを低減できる優良な投資対象であると言えます。
将来的な金利低下リスクはどうか
金利上昇による恩恵を受けるバンク・ローンですが、逆を言えば金利低下局面では金利収入が低下して、リターンが下がってしまいます。
じゃあ金利が低下すると、投資妙味が薄れて、ローン価格は下がってしまうのではないか?と心配されるかもしれませんが、必ずしもそういうわけではなく、仮に金利が低下して金利収入が減るような状況になったとしても、バンク・ローン価格が80とか75とかに下がることはありません。先ほども言いましたが、平常時のバンク・ローン価格は大体95~105の間で推移するものであり、そこまで大きく金利低下によって価格が下がることはないと言えます。怪しいと思う方はぜひSRLNの価格推移をご覧ください。基本的には緩やかながら右肩上がりのグラフとなっていることがご覧いただけるかと思います。むしろ金利が大きく低下した2020年~2021年は価格が上昇しているのがみてとれます。ちなみに2013年5月頃から足元2023年2月24日までのSRLNの価格と配当利回りの相関関係は0.08でしたのでほぼ無相関でした。
ということで、やや専門的な内容も含んでしまいましたが、バンク・ローン投資の魅力と注意するべきリスクについて書きました。SRLNを特に取り上げたのは単にマネックス証券で買える銘柄だからです。
個人投資家の投資対象というとどうしても株式が中心になってしまいますが、この機会にぜひバンク・ローン投資も検討対象に入れてみてはいかがでしょうか。