先週、先々週と非人道的な労働時間を強いられ、前回のブログから間が空いてしまいました。毎度ながらすみません。
非人道的とか言いながら、先週も大学での講義の機会をいただき、今回は私も登壇させていただきました。
ちょうど就職活動へのアドバイスを、と最後にリクエストを頂戴したので、こちらのブログで前々回お話しした、「情報の陳腐化」と「大志なき活動」の危うさについてお話ししました。
さて、そんなことで就職活動と投資の共通点③ということで、持っておくべき重要なマインドについてもう少し詳細にお答えしていきたいと思います。
持つべき大切なマインド1:人のマネごとをしない
就職活動でめちゃくちゃ苦労した私が言うのもおこがましいが、就職活動においても、投資においても重要なことの第一は人と合わせてはいけないということである。
これはこれまで2回のブログでもお伝えしているが、人と同じことをしたところで、人よりも秀でたリターンを出すことはできない。「ほかの人が同じことをする(マネする)ようなこと」を先んじてやった、ムーブメントを起こしたのであれば大いに評価されるが、二番煎じ以降は活動の価値がどんどん失われる。
インターンに行け、ボランティアをしろ、コミュニケーション能力をアピールしろ、いわゆる就職活動で「王道」とされていることをしたところで、そこに「大義」がなければ陳腐な金太郎飴のような無個性の就活生の出来上がりだ。もちろんそういう量産型のクローン人間みたいなのが好きな会社もあるのでそれはそれで良いのかもしれないが、果たして個性を押し殺して入った会社で幸せかどうかはわからない。
持つべき大切なマインド2:短期的な利益に惑わされない
「果たして会社に入って幸せかどうかはわからない」、に関連して、持つべき大切なマインドの二つ目は「短期的な利益に惑わされない」ということだ。
こと、良い大学に通っている就活生が陥るいわゆる「大企業病」だが、正直今どき「大企業」が本当に良い会社かどうかなんてわからない。昨今の企業スキャンダルをみていると、「大企業様」のガバナンスのなさ、劣悪な労働環境、世界的にみた競争力のなさはあまりにも目に余るものがある。
別にだからと言って中小企業ならなんでも良いというわけではもちろんないが、企業名、企業ブランドだけで就職活動をするのは中長期的にみて不幸な結果を招く可能性が高い。
持つべき大切なマインド3:最初から大勝ちを狙わない
もちろん、私のような就職活動からすでに10年近くが経っているおじさんの意見なんて老害にしか聞こえないかもしれないが、中長期的にみて、不幸な結果を招かないようにするアドバイスを最後にしたい。それは、「最初から大勝ちを狙わない」ということだ。こちらも投資においても重要となるマインドだ。
大学卒業後のあなたの人生はあなたが想像しているよりも長い。おぎゃーと生まれてから、大学を卒業するまでの時間の2倍の時間を労働・キャリアに費やすことになる。60歳または65歳で退職するとして、大学を卒業してからの約40年間を「ただただつらいだけの懲役40年」にするのか、「時につらく、時に楽しい40年間」にするのかはあなたの心がけと行動次第だ。そこで重要となるのは「最初から大勝ちを狙わない」ということだ。つまり新卒で入る会社が人生のすべてだと思わないで良いということだ。今どき新卒で入った会社にずっと定年退職までいることが別に当たり前というわけではないし(もちろん大きな不満なく、ずっといたいと思える会社に入れたのならそれはそれで良い)、転職したからといって、今よりも条件が悪くなるというわけでももちろんない。「新卒で良い会社に入れなかったら終わりだ!」なんて思うことはなく、「自分がやりたいことを学べる、触れることができる会社に入ろう。そこで経験を積もう」くらいのスタンスで考えればよいと思う。
例えば下記の例を考えてみよう。あなたは第一志望が投資運用業界に入ることだとしよう。しかし、就職活動をした結果、内定をもらったのは、一流企業のメーカーと中堅の資産運用会社だったとしよう。
この場合あなたの選択肢は以下の2つだ。
1)やりたいことなどすっぱり忘れて、メーカーの仕事を頑張る
2)将来のステップアップを見据えてまずは中堅企業で頑張る
別に1が正解で2が間違いというわけではないし、その逆もしかりだ。しかし、1を選んだ場合は、あなたが(少なくとも今の段階で)やりたいと思っていることからは離れてしまう。それでも良いのであれば1ももちろん良い選択だし、キャリアを通じてやりたいという強い意志があるのであれば2の道を選ぶほうが中長期的にみてプラスになる可能性が高い。
新卒カードが切れなくなったらもう終わりだ~なんて思っているのだとしたらそれは大きな間違いだ。「新卒カード」以外にあなたに強み・魅力がないのであれば、それはあなたの努力不足、実力不足、怠慢だ。頑張っている限り、道は必ずある。
最後に私の経験談をすこし
さて、そんなわけで私の例を最後に書いていきたい。
私はかつて自身の就職活動の体験を本にまとめて、アマゾンで販売したことがある(今も販売中なので関心なる方はぜひこちらから)。
その本に関するアマゾン・レビューがまあなんともひどいもので、本の内容に関する批評であれば甘んじて受け入れるが、中には下記の通り完全に人格否定的なレビューがあった。
タイトル:負け組就活生の戯言
『「外資系投資銀行」と筆者は謳っているが、結果的に内定を得たハウスは欧州の(少なくとも日本においては)無名ハウスであり、多くのIB志望の学生にとって参考になるものでは無い。』
名前も顔も知らない人にここまで書かれるのはなんとも悲しいものだが、まあそれはどうでもいいとして、このコメントを客観的に読んだ時に問題というか、もったいないと思う点をいくつか反論として書かせてもらう。
まずは「就活の結果のみをみて勝ちと負けを判断していること」だ。先ほど短期的な結果に惑わされてはいけないという旨のことを言ったが、まさにそれにこの方は嵌っている。入る会社に勝ちも負けもない。私は最終的に初心貫徹、自分が行きたかった外資系投資銀行のフロント・オフィスに新卒で入ることができた。そりゃ、行きたかった会社ではなかったかもしれないが、やりたいことに最後までこだわり、諦めなかった。何度も心が折れそうになったが、チャレンジし続けて良かったと思っている。この辺の詳細はぜひ本書をお読みください(という宣伝である笑)
次に、『結果的に内定を得たハウスは欧州の(少なくとも日本においては)無名ハウスであり』という部分だ。
日本において「無名」であることの何が悪いのか私にはわからない。日本において「無名」でも世界においては「超有名」な企業など、別に外資系投資銀行に限らず、どの業界にもいくらでも存在する。「日本において」なんて尺度で測ることに何の意味があるのかさっぱりわからない。
別にニューヨーク・ヤンキースとボストン・レッドソックスだけが大リーグじゃないし、バルセロナとレアルマドリード以外は欧州サッカーではないなんてことはない。「日本において有名でなければだめだ」なんて考えは典型的な大企業病だ。
ちなみに後日談だが、この方の言う「欧州の(少なくとも日本においては)無名ハウス」に勤務していた私の同期や諸先輩方の中にはその後、ゴールドマンサックス、メリルリンチ、BNPパリバ、JPモルガン、モルガンスタンレー、クレディアグリコル、バークレイズ(思い出した順)などなど、この方の言うところの日本において有名ハウスに転職していった方が多くいる。バイサイドも含めればもっといる。中堅企業だろうが、無名企業だろうが、頑張って実力をつければその後の可能性なんていくらでも開けていく。何度もいうが、日本において有名だの無名だの、視野の狭いところで語ること自体ナンセンスだ。もう少し目線を外(世界)に向けたほうが良い。
最後に、『多くのIB志望の学生にとって参考になるものでは無い。』というところだ。「参考」とうのをどういう意味で使ったのか判然としないが、私の経験をまねることは「参考」にならないというのであれば、それもナンセンスだ。下記が本書における私が5年以上前に書いた紹介分の全文だが、特に太文字下線部で強調した通り、「就職に役立つエッセンスが入っている」とは書いた。
本書紹介文
外資系を目指したある学生の壮絶な就職活動体験を綴った一冊。自主出版だからこそ出来た、実名外資系投資銀行・コンサルティング・ファーム多数登場の赤裸々な体験記。
外資系投資銀行サマー・インターンの様子から、インターン生のその後の進路、謎に満ちた一発逆転のボストン・キャリア・フォーラムの全貌、戦略系コンサルティング・ファームのジョブでの出来事など、就活生目線で見た就職活動のリアルを限りなく追求。もちろん、面接での質問事項にも言及。
外資系投資銀行2社からサマー・インターンをゲットし、幸先の良いスタートを切った筆者がその後体験した悲惨な就活のすべてをあますところなく収録。
外資系に限らず、就活生、そしてこれから就活を控えるすべての学生、中高生、そして子供を持つ親世代の方に読んで欲しい作り話一切なしのノンフィクション就活体験記。きっと就活で役立つエッセンスが入っているはず。
第1版として執筆したものを大幅に加筆修正した完全版です。一層深みを持った内容となっております。
当然この本を出した当時、今書いているブログのことなど一切頭になかったが、当時から「参考になる」とか「俺と同じことをしろ」というようなことを書いているのではなく、「役立つエッセンスがあるはず」とあくまでこの本をきっかけに、自分自身で考えてほしいという思いを込めている。なにか絶対的な「答え」を求めて本書を読んだ人には物足りなかったかもしれないが、答えではなく、自分なりの答えを考える「きっかけ」としていただければまた、本書に対する印象も変わったのではないかと思う。まあこれは作者の一方的な、それこそ戯言だが。
さて、最後はただの私の言い訳コーナーみたいになってしまったが、このように本質的なことではなくてただの悪口を書かれ、それに対する反論の場もなく一生レビューとして残るというのはなんとも悲しいのでいい機会だと思って、反論を書かせてもらった。付き合わせてしまってすみません(笑)
さて、まただらだらと書いてしまったが、本日のテーマである、就職活動と投資の両方において重要なマインドは下記の3点だ。
1)人と同じことをするな。周りから外れる勇気をもって自分の信じる道を進もう。
2)短期的な利益に惑わされるな。人生万事塞翁が馬の精神をもって、中長期的にみて、最良だと考える道を選ぼう。途中での軌道修正はいくらでも可能だ(頑張っている限り!)
3)最初から大勝ちを狙うな。ホームランは華々しいが、小さなことの積み重ねで得た1点を過小評価したらいけない。
いずれも投資においても役立つ教訓であると個人的には思う。
次回は大学での講義でお話しさせていただいた今最もアツい投資テーマ「ESG投資」について書いていく。