母校で講義をした時の話 2024年秋学期編


こんにちは。

11月中旬くらいから年末モードでぬくぬくしようと思っていましたが、ありがたいことに年末までまったりながら、結構やることがある今日この頃です。2025年の投資計画に関しても、ネタにする材料は大方揃いましたのでまた近いうちに書きたいと思います。

今回は毎年(毎学期?)恒例になっている母校でのゲストスピーカーとしての講義に関して書きたいと思います。前も書いたかもしれませんが、年末は残っている有給休暇消化期間でして、毎年この時期を利用して、学生時代良くしてもらった教授の講義に遊びに行っております。今回はその秋学期編ということで、大学1~2年生の英語の授業2つで講義をする機会を頂戴しました。

講義といいましても、私の能力的にたいそうな金融論の授業ができるわけではないので、現代ポートフォリオ理論に対する私の(批判的)私見を述べたり、投資業界でのホットな話題なんかを取り上げたりして紹介しているのですが、今回は投資リスク(ボラティリティ・リスクとクレジット・リスク)とオルタナティブ投資について触れました。

まあ大学1年生なんかまだまだ高校生に毛が生えたくらいのレベルなのでどこまで理解できたかはわかりませんが、少しでも投資とかマーケットに関して興味を持つきっかけになってくれたら良いなと思います。

講義中もさんざん強調しましたが、私は日吉での授業が好きでして、先ほども言いました通りまだ高校生に毛が生えたくらいの元気で、いい意味でぱっぱらぱーで、社会に毒されておらず、柔軟に物事を考えられたり、積極的に何かに取り組んだりできる時期である日吉時代を学生にはぜひとも大事にしてほしいと思います。これが三田に行くと途端にみなさん就活モードに入って、つまらない人間になっていくのだからもったいないものです。そういう意味でも、まだ思考が柔軟な日吉の時期に様々な物事に振れ、考え、将来に思いをはせてほしいものです。

ありがたいことに、どの授業でもそこそこ質問をいただきまして、頑張って簡潔ではありますが、しっかりと答えるようにしましたが、時間的制約もあって、全部に完全に答えることができたわけではありませんので、下記に思い出せる限りいただいた質問に改めて答えていきたいと思います。多少、質問者の意図した質問と異なっているかもしれませんが、そこはご容赦ください。質問の後の括弧は2限の授業で受けた質問なのか、4限で受けた質問なのかを区別したものです。ぜひとも自分が受けた授業以外のものも読んでみてください。またいくつかキーワードや参考文献を記載しました。関心のある人はぜひとも参考にしながら今後の学習・研究に役立ててください。

頂戴した質問~投資編~

Q 個人投資としての投資ポートフォリオに債券を組み入れるべきか?(2)

A 入れるべきかどうかといわれると個人の好みの問題なので、入れたければ入れてくださいという回答しかできませんが、学術研究・実証研究的に、個人投資家でかつ若い時期から投資をスタートできるのであれば、株式ポートフォリオ100%(タートル式によれば100%以上)でも良い、と言われております。

Q 投資信託はどんなものを買ったほうがいいでしょうか。(2)

A 投資信託を作っている側の私から言うと、投資信託をそもそも買わないほうが良いです。理由は挙げればきりがないですが、究極的には金融機関に支払う手数料が高いからです。もちろん高い手数料に見合うサービスはしてくれていると思いますが、ぶっちゃけいらないサービス(毎月の市場レポートとかコメントとか律儀に読んでる人はいないと思いますし、そんなのに金払う必要もないです)ばかりなので、無駄に手数料だけ支払されていると思うべきです。投資信託の手数料は話し相手がいない寂しいおじいちゃんおばあちゃんが証券会社とか銀行の窓口で若い担当者とお話しするために支払っている手数料、くらいに思っておいたほうがいいです(偏見)。

投資信託を買うくらいなら、同じようなコンセプトのETFを買うほうがよっぽど手数料を低く抑えられますし、好きな時に取引できるので優良です。おすすめのETFは次回のブログにも書こうかと思いますが、NISAの対象かどうかはおいといて、

SRLN

SPYD

あたりかなと思います。また次回のブログに書くのでそちらを見てください。

Q 株のデモトレードなどは意味があると思いますか?(4)

A 約定や執行など取引のやり方などを学ぶのには良いかもしれませんが、デモトレードでいくら稼いでも、逆に損失を出しても結局それは電子上のスコアでしかないので、実際にお金を投資するのとは違うと思います。少額でもいいので、実際に投資をしてみたほうが、緊張感もありますし、精神的な上げ下げも経験で来て良いと思います。次の質問も合わせてお読みください。

Q 米国株と日本株で投資をするならどちらが良いでしょうか?(2)

A どちらが良いという明確な答えはありませんが、可能性論だけで言うと、国(経済全体)自体が今後も成長していくと考えられる米国のほうが勝率は高いと思います。日本株は今年一時盛り上がりましたが、個人的な意見として日本経済はもうオワコンですので、国が今後成長することはないでしょう。もちろん企業によっては株価の上昇は今後もありますが、中長期的に見て魅力的な投資対象ではないです。

また米国株は1株から買えますので、極端な話5万円あればほとんどの銘柄が買えると思います。日本株は最低でも100株買わなくてはいけない株がほとんどなので、株価が1000円の株でも10万円最低必要となりますし、複数社の株を買うこともできません。いくつかの株を試しに買う、という意味でも米国株のほうが投資を始めやすいです。

ただし、米国株を買う場合、当然取引通貨は米ドルですので、ドル円の為替変動による影響を受けます。今は円安時代なので、米国株投資が難しいという一面があります。ただし、かつてのように1ドル=120円、みたいな時代には残念ながらならないと思います。円高になったとしても1ドル=130円台後半になったら御の字、基本的には1ドル=140円台半ばくらいで落ち着くと思います。この辺はまた次回のブログで書きたいと思います。

Q 新興国債券への投資についてどう思いますか?(4)

A 新興国債券は債券ながら、変動リスク(ボラティリティ・リスク)が高いです。先進国債券とは異なり、ソブリン(国)債であっても、返済の蓋然性が相対的に低く、先進国では考慮する必要性が少ないリスク(クーデター/政変リスク、政治家の汚職リスクなど)があるため、注意するべきことが多いです。米国株投資同様、ドル建てではなく現地通貨建ての新興国債券を買う場合には、為替変動リスクも負うことになりますが、現地通貨安にもなりやすいので、様々な変動要因に左右されます。

質問の意図的に新興国はこれからも先進国対比成長余地があるから、投資対象として良いか、というような意味合いがあったように思います。それ自体はその通りで、新興国のほうが今後も成長余地は十二分にあるでしょう。新興国の成長を投資機会としてとらえるのであれば、新興国株のほうが良いでしょう。

Q 自分たちのやっていることが社会/環境に役立っていると思うか?それとも自分と顧客の利益だけを追求しているか?(4)

A (まずは授業中の回答のおさらい)金は天下の回り物なので、直接・間接的に役に立っていると考えます。

企業が工場を新規で建てることのための資金調達を目的とした債券を発行し、我々がその債券に投資をした場合、我々はただ貸した金+アルファ(金利分)を得ます。一方で、そのお金を貸してもらった企業が工場を建てることで、建設会社に金が入り、工場が完成すればそこに雇用が生まれます。その工場で環境にやさしい製品が作られるのであればそれは環境にとってもプラスのことかもしれません。これは間接的に社会・環境に良いことをしているといえるでしょう。

おそらく、質問者の意図としてはESG投資やインパクト投資について言及してほしかったのかなとも思いますので、ブログで補足します。

昨今は我々投資会社に対して、自分さえ儲ければいいのか?という(まったくもって的外れですが、まあとりあえずそういうことだとして)批判を多分に受けておりまして、また特に若い世代の投資家は金銭的なリターンだけでなく、自分のお金が社会・環境に好影響をもたらすような投資をしたいという考えがこれまでの世代以上に強いので、そういうトレンドを反映して、ESG投資やインパクト投資というものがより進んできております。

ESGはEnvironment Social Governmentの略であり、要は環境・社会・(企業)ガバナンスに役立つ投資をしようというものです。インパクト投資も同様で環境や社会に直接役立つ投資をしようという考え方です。

ESG投資やインパクト投資に関する考え方は投資会社ごとに異なりますので、一般化することは難しいですが、私の勤めている会社では非常に重要なものとしてとらえております。

ただし、コンセプトは良くても、本当に、本質的に環境・社会の役に立っているのか、ということはしっかりと調査する必要があります。例えば、紙ストローの導入が一時流行りましたが、プラスチックの削減には役立つかもしれませんが、紙のごみは増えますし、紙を使用するということは森林が伐採されるということですし、ある一面を見れば環境に良いことでも、別の一面を見ればそうではない、ということもあります。

この辺はまだまだ学術研究の域を出ないというか、多くの実証分析・学術研究の余地がある分野なので、ぜひともみなさん研究してその成果・結果を教えてください(本当に知りたいところですので、ぜひ誰か教えてください)。

参考文献
人生100年時代の資産管理術 リタイア後のリスクに備える

ライフサイクル投資術 お金に困らない人生をおくる

JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則

投資で一番大切な20の教え 賢明な投資家が知らない隠れた常識

グローバル・グリーン・ニューディール: 2028年までに化石燃料文明は崩壊、大胆な経済プランが地球上の生命を救う

それをお金で買いますか 市場主義の限界

キーワード

ESG投資

インパクト投資

責任投資

グリーン・ウォッシング

 

頂戴した質問~学生時代の過ごし方/就活編~

Q 日経新聞はどの記事を読むべきですか?(2)

A 日経新聞のどこを読むかなんてそんなに重要ではなくて(失礼)、何か特定のトピックを深堀していくのが良いかと思います。例えば「FRBの金融政策」とか、「日本の不動産市場の動向」とか、自分が興味あるトピックに関して、毎日関連する記事を追う、専門書とかほかの記事(WSJとかBloomberg、ロイターとか)も読んでみる、などなにか興味関心のある事への理解を深めていくのが良いでしょう。その中で、「そもそも利下げって何?」とか「中国の不動産投資の動向どうなんだろう?」とか興味関心が広がっていくと思うので、少しずつ理解したいこと・興味のあることを広げていく。そういう新しい関心事項をまた追っていく、ということをやっていくと、理解がどんどん深まっていくでしょう。このようなトピックを少しずつ増やしていくと良いかと思います。

何でもいいですが、大学1~2年生ですでに日経新聞を読んでいること自体が立派です。私が日吉の時は少年サンデーとマガジンくらいしか読んでなかったです(笑)

Q インターンはどこでやりましたか?(2)

A ゴール〇マン・サ〇クスとBNPパ〇バとボ〇トン・コンサルティング・グ〇ープというところでしました。インターンが就活やキャリアで役立ったかといわれるとはなはだ疑問ですが、学生相手にイキれるので、そういう意味ではいってよかったと思います(笑)

Q 起業をしたいのですが、何かアドバイスはありますか?(2)

A 起業自体は法務局に書類と手数料を払えばだれでもできるので何も難しいことではありません。個人事業主で良ければ最悪なんもしなくても今日からなれます。

大事なのは起業をすること自体ではなく、何をどうやって自分の飯のタネにするかです。どんなモノやサービスを提供すれば人はあなたに喜んでカネを払うでしょうか。あなたはほかにはないどんな付加価値を提供できるでしょうか。これをぜひともこれからの学生時代で考えてください。

個人的には急がば回れの精神でひとまず自分がやりたいことの業界最大手かベンチャーに入って30歳くらいまで下積みをしたほうが良いかと思います。そうすればどうやってその会社は金を稼いでいるのか、だれが利害関係者なのか、などカネの流れも見えてきますし、あわよくばコネもできるかもです。最大手に行けば独立起業したときに「元〇〇勤務」という肩書が手に入り、なんとなく社会的信用やうさん臭さが幾分解消されるでしょう(笑)ベンチャーに行けば良くも悪くも早い時期からいろんなことが経験できると思うので、それはそれで大手にはない体験ができるかもしれません。

Q インターンなどの面接やESではどんなことを話せば/書けばいいですか?(2)

A これを話せばいいというような正解はないです。とにかくなんでもいいから面接官の印象に残るように努力してください。

面接官をやっていて思いますが、基本的にみなさん大同小異で同じようなことを言うので、本当に面接が終わった瞬間に顔も名前も発言内容も忘れてしまいます。今後はESをチャットGPTに書かせる、なんてことも一般的になっていくかと思いますが、実に愚かな行為です。生成AIは有用だと思いますが、あくまでネット情報を最大公約数的なものにまとめるだけだと思いますのでオリジナリティは全くないです。拙い内容でも自分で考えた発言/内容のほうがよほど印象に残ると思います。

言うは易く行うは難しですが、めちゃくちゃに無責任なことを言わせてもらえれば、どんなことでもいいですから、これだけは同世代で自分が一番すごい、というようなことを持っていると印象に残ると思います。夏休みにナンパした女の数(かつナンパの結果を統計分析まですればなおよし)でも、好きな小説家の人生とそれが作品に及ぼした影響に対する独自研究とか何でもいいので、とにかく「このことに関しては、俺に勝てる奴は絶対いない」、というようなことがあると面白がってもらえると思います。

Q 外資系金融に入社するのは難しいですか(4)

A 4限の授業は留学生向けの全編英語の授業で、質問者の意図は「私の日本語力でも大丈夫か」という質問でした。私はこの人の話す日本語をほとんど聞いてないので、実際どれくらいできるのかわかりませんが、ぱっと聞いた感じは少なくとも面接は問題ないと思います。

ただし、外資系といえど日本の就活の悪しき側面でWebテストやテスト・センターというものがあります。このバカげた知能テストみたいなものの言語?だったかな、みたいな科目が結構厄介で、私も高得点が取れた自信がありませんが、日本語ネイティブではない就活生にとっては非常に骨が折れるものであると思います。

自分の日本語力に自信がないと自覚しているのであれば、早めに対策をすることが大事です。SPIの教材を一つ買って勉強したり、あえて塾講師で国語をおしえてみたり、日本語での授業を受けてみたり、今からならできることがたくさんあると思います。Get out from the comfort zoneじゃないですが、あえて自分を難しい場面に追い込むことで身につくものもあります。頑張っていきましょう。おじさんで良ければいつでも話し相手になりますよ(笑)

Q 今の記憶を持ったまま、就活をやり直せるとしたら、どんな業界を選ぶか。

A (まずは授業中の回答のおさらい)基本的に私は人と競争するのが好きで、勝ち負けを競うのが好きなので、今の(特に20代の苦しい記憶があるとしても)また同じようなキャリアを選ぶのではないかなと思います。今の記憶があるならもっとうまく対処できることもあると思いますが、基本的には自分が歩んできたキャリアに後悔はないですし、ここまで来た自分を誇りに思っています。

みんなで手をつないで、歌を歌って踊りましょう、というぬるい環境が嫌いなので、今の緩い感じが正直好きではないですし、頑張らなくてもいいよ、という方向に社会が向かっていることに関しては、あまりよく思っていません。

ただし、この仕事をしていてすごく自分は「食と農」について関心があるんだなと思います。もし高校生に戻って学部選択から戻れるのであれば農学部に行きたいです。食糧生産や代替食品、もう少し広い視点に立てばエネルギー問題などにも関連してくると広い学問領域が農学にはあると思います。最終的にまたこの世界に入るかもしれませんが、農学の知識はもっと得たいです。

参考文献

サルになれなかった僕たち なぜ外資系金融機関は高給取りなのか

なぜ僕たちは金融街の人びとを嫌うのか?

生涯投資家

中卒の組立工、NYの億万長者になる。

ブラックストーン

 

役に立つかわかりませんが、私が学生時代からつけている読書記録もご参照ください。


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