先日受けた社内のコンプライアンス研修で、匿名でもSNSやブログで個別銘柄に関する言及はしないようにとの教育を受けたので、こちらのブログの存続が危ぶまれる今日この頃である。
個別銘柄の紹介はしない中でも最大限有益なものになるよう注意していきたい。
前回までの2回のブログ(下記)で来年はバリュー株がアウトパフォームする可能性があること、景気敏感セクターが堅調なパフォーマンスになる可能性が高いことについて言及した。
2021年の米国株式市場に対する展望① グロース株とバリュー株のこれから
2021年の米国株式市場に対する展望② ディフェンシブ・セクターと景気敏感セクターのこれから
今回から何回かに分けて、これらの分析を踏まえた来年の投資テーマについて書いていきたい。個別銘柄の紹介等はできないので、具体的な銘柄の言及は避けるが、読んでいただいている人の参考になるものにしていきたい。
ご存じの通り、米国株式市場は割高感が強いといわれて久しい。割高割高といわれながらなお上昇している(大きく下げない)のが今の現状だ。最近9000億ドル規模の景気刺激策も決まり、米国経済を下支えするとみている。また、コロナウイルスに有効なワクチンも実践投入されており、医療従事者等が今は優先的にワクチンを接種されているが、今後は一般市民もワクチンを受けられるようになるだろう。早くて来年の半ばにはワクチンは広く普及すると期待されている。
このような状況を踏まえ、足元依然として割安感があり、景気敏感セクターに属するものとして、僕は外食業界が挙げられるのではないかと考える。
下はRussell 3000 IndexとRussell 3000 Index Restaurant and Bars SubsectorというRussell 3000構成銘柄のうちサブ・セクターがレストラン・バーに分類される銘柄(34銘柄)だけで構成されたインデックスの年初来のリターンを2019年12月末時点を100と指数化した推移グラフである。こちらの白線(レストラン・バーのサブ・セクター)と緑線(Russell 3000)をご覧いただくと、緑線が白線を足元アウトパフォームしていることがわかる。つまり市場全体のほうがレストラン・バーの株で構成されたセクターよりも堅調であることを示している。冒頭に述べた通り9000億ドル規模の追加的な景気刺激策は成立する見込みであるが、足元米国を含んで世界的にコロナウイルスの感染者数が増えていること、有効ワクチンの開発はされたものの、摂取は医療従事者等一部に限られていること、コロナウイルスの変異体が出てくるなどまだまだコロナ禍の収束の目途は全く立っていない。そのような中、レストラン・バーの株は特に直近軟調に推移していることがこちらのグラフからもみて取れる。
ただし、コロナウイルスによる感染被害が落ち着いていた夏場(8月~10月)ごろまでをみると、白線が一時緑線を上回っていることがわかる。これはレストラン・バーの動向はコロナ禍の状況と大きく連動していることを示していると捉えることができる。
今後もコロナ禍による影響は長期化するとみられ、収束には12~15カ月ほどかかるのではないかと個人的にはみている。しかし、来年の夏場などコロナ感染が落ち着いた局面、またはコロナの収束がみられた場合には外食セクターが市場全体を大きくアウトパフォームすると期待することができるのではないかと考える。
個別銘柄に関する言及ができないが、個別銘柄をみる際の観点としては下記の3つが重要となるだろう。
1)コロナ対応ができる体制を整備していること
2)複数ブランドを添加している大手であること
3)足元出遅れていること
簡単にそれぞれについてみていきたい。
1)コロナ対応ができる体制を整備していること
外食セクターの中でパフォーマンスに明暗が分かれているのがコロナ対応ができる体制であるかどうかだ。「コロナ対応ができる体制」とは具体的には、ドライブ・スルーやデリバリーへの対応力(広範な地域への宅配能力)、オンライン注文プラットフォームの整備状況、必要な設備投資や人的資源の確保能力などが挙げられるだろう。このような体制整備が可能、もしくはすでにある程度整っていないと、コロナ禍による営業自粛などの影響をもろに受けてしまう。
2)複数ブランドを添加している大手であること
これはコロナ禍の時だけに言えることではないが、消費者の趣向やデリバリー等に適するメニューかどうかなどを勘案すると、例えばピザ・デリバリーだけをやっているところよりも、ハンバーガー・チェーン、イタリアン、メキシカン、中華など、多くのブランドやメニューを備えている企業のほうがより広範な消費者を獲得できると期待する。
3)足元出遅れていること
最後に、あくまで来年は「バリュー株(出遅れ銘柄)が堅調になる」という見通しの下、このような予想をしているので、投資を検討する際は足元同業他社対比割安感がある銘柄のほうが今後強い反発が期待できると考える。
最後に大事な補足
今回のブログに関して誤解のないように補足すると、外食セクターは正直概ね市場リターン程度で推移しており、そこまで割安感があるセクターとは言い切れない。「食」は生活必需なものであり、「景気が悪くなったから食べるのを控えよう」とか「コロナ禍だから食欲がわかない」ということは基本的にはない。むしろ景気が悪くなるとファーストフードなど低価格外食チェーンの需要は上がる。今回はコロナ禍ということで気軽に外に食べに行くということができない状況にはあるが、それでもこのようなファーストフード系の企業はもともとドライブスルーやデリバリー・サービスの体制を整備している。実際マクドナルドやスターバックスなどはコロナ禍前の水準まで株価は戻っており非常に堅調だ。逆を言うとここからの上昇余地は限られていると言えるかもしれないが、それでももはやマクドナルドとスタバはアメリカの主食のようなものだ。今後もこれら「主食」企業は安定的に推移するだろう。
このようなことを踏まえ今回のブログでは外食系でかつ出遅れているところに強気見通しを有していると書いた。
日本ではレストランなど外食産業は今後も逆風が強いといえるが、ポスト・コロナ時代を期待して、今から外食セクターの銘柄を仕込んでおくのは一つ得策なのではないだろうか。
なかなか面白い視点ですね!外食産業への投資は今の状況を見ても入りづらいがだからこそ、割安であれば行くのもアリって事ですね!観光や航空株もアリですかね?
こちらもコメントありがとうございます。
外食産業は投資家からの注目度が高いセクターであると考えます。インデックスをみる際は、サブセクターのインデックスをみることもぜひおすすめ致します。リクエストがあれば私のほうでBloombergから取ります(笑)
観光セクター(ホテルやレジャー)も面白いと思います。特に海外ではワクチンの接種が進んでおりますし、今後ビジネス利用(出張)ニーズも高まると思いますので、ホテル株も注目しています。
航空株も日本株は上昇しておりますが、注意が必要です。今回のコロナ禍でかなりの借り入れ(借金)をしたので、今後はその借金返済にキャッシュ・フローが多く使われるとみられます。優待目当てなどで長期保有するのであれば航空株も面白いと思いますが、向こう1年~数年は債務負担増に注意する必要があると思います。
ご返信頂きありがとうございます。ご連絡遅くなりました。ハイテクグロース株についてはどう思っていらっしゃいますでしょうか?最近の銘柄ですとc3aiやパランティアは個人的に高値から見ると割安で将来性ありなのかなと素人ながら思ってます。
あと、気になるところとしてはbitcoinですね!とうとう、6万ドル超えてきましたしもう一度暴落が来るだろうと思いつつ買えずに踏ん切りがつかずにいます。
返信が遅れるなどと、お気にしないでください。そんな義務感を感じるものではないですしお気軽にお読みいただき、お気軽にコメントください。いつもありがとうございます。非常に励みになります。
去年の年末ごろから年初3月ごろまでは、長らく負けていたバリュー株がグロース株をアウトパフォームしているような局面が続いていましたが、足元はバリューvsグロースというスタイルによる優劣よりも個別銘柄勝負になってきているというのがアメリカのアナリストが言っていたことです。したがって、ハイテク・グロース株であっても一概に「もう上昇余地がない」とくくることはできず、銘柄によっては今後も高位なパフォーマンスが期待できると思います。
立場上、個別銘柄に関する言及は「ななし様」を含め投資家保護の観点、コンプライアンスの観点から難しいのですが、目の付け所は非常に良いと思います。ハイテク・グロースというとGAFAやGAFAM、一昔前はFANG、FAANGなどいろいろ呼ばれておりましたが、これらの超大手企業の陰に隠れ、投資家からの注目を十分に浴びていない企業はまだあります。グロース株全体に関しては冒頭の通り、足元は方向感が見えなくなっておりますが、「ハイテク」に関しては今後も堅調にパフォームするとみています。
Bitcoinに関してはもう全くわからないですね(笑)おそらく次の暴落を待っている人も多いと思いますし、そうなると暴落が起きないかもしれないし、起きたとしても押し目買い勢が大勢いるため、すぐにまた暴騰するように思います。
Bitcoinなどの暗号資産に関して注意が必要なのは、価格が完全に需給で決まるということです。例えば株であれば企業の業績、債券であれば発行体の信用力(返済能力)、通貨であれば発行国の信用(財政状況)などで価値を測ることも相対比較もできるのですが、Bitcoinなどの暗号資産はそういった「価値のよりどころ」がなく、完全に買い手と売り手の需給だけで決まります。価値のよりどころ(価値が適正かどうかを判断する材料)がないために、暴落(売り優勢)と暴騰(買い優勢)を繰り返すのです。
これではかつての呼び名である仮想通貨の「通貨」としての役割を果たすことができません。
暴落時に買い、次の暴騰を待つというスイング・トレードは短期的には非常に魅力的な財テク(あえて「投資」という言葉は使いません)ですが、今後は規制が強化されるのか、今のようにジェットコースターを続けるのか、まったくの謎です。
私も手を出したい気持ちはやまやまなのですが、「自分が十分に理解できないものに手を出すな」というウォーレン・バフェットの言葉に従って、傍から億り人をみるだけにしております。