年始から本職が忙しすぎた上に、こちらのブログのライセンスが切れていたせいで、なかなか書き込むことができなかったわけだが、何とか諸々の状況が改善してきたので久しぶりにブログを更新してみる。
昨年はコロナ禍もあって、投資・金融・経済ブログに偏ってしまったが、本来のこのブログの3大テーマは「投資」・「学び」・「挑戦」なので、今後は「学び」と「挑戦」に分類できるようなネタも挙げていこうと思う。
さて、とは言いながら2021年のブログ第1弾はさっそく投資ネタなのだが、どうかご容赦いただきたい。
今回はまだ非常事態宣言が出ていなかった2021年1月某日、かつて新卒で入社した投資銀行で一緒だった同期の方々と会食をしたときの話である。
3人の共通点と相違点
銀座にて開かれた夕食会であったが、外資系投資銀行らしい非常にユニークなメンバーが集まった。まずは国籍だが、私は日本人、ほかの2人は韓国人と中国(香港?)人である。私たち3人は一時期同じ会社で働いたが、今はそれぞれ別の道を歩んでいる。私は投資会社でプロダクト・マネージャー(なんちゃってポートフォリオ・マネージャー)として働き、1人は現在別の投資銀行でトレーダー(韓国人)、もう1人はヘッジファンドのトレーダー(中国人)としてそれぞれ活躍している。全員がアジア圏出身のため、文化的な差異は小さいと思う。同じ金融業界で働いているが、上記の通り、それぞれの異なる役職に就いているため金融市場に関して異なる観点を持っている。このように共通する点と相違する点を持つ3人が実に5年ぶりに会うこととなった。
通貨供給量の増加が描く未来
お互いの近況報告が終わった後はいろいろな話題があがったわけだが、やはり昨年のコロナ禍は全員にとって強烈な記憶を刻んだ。結局日本を含め、引き続きコロナ禍は続いているわけだが、こと金融市場に関していうと、すでにコロナ禍前の水準まで戻っているか、それを超えるところまで上昇している。
有効なワクチンの開発・普及が進んでいるというのも当然あるが、この短期的かつ急激な回復を下支えしているのは各国政府および中央銀行による大規模な景気刺激策だ。市場が大きく下落した2020年の3月、4月以降、人々への現金支給があったほか、失業給付の増額、中小企業支援などを各種支援策を政府は打ち出したし、中央銀行は多額の資金を使って市場に流動性を供給(買い支え)を行っている。アメリカではバイデン新政権が誕生しすでに9000億ドル規模の景気刺激策が可決し、足元は2兆ドル規模の追加支援策が議論されている。
これらの支援は個人および企業の財政状況の悪化を防ぎ、コロナ禍からの早期回復を実現させている。そんな中で今は外出するのも外食するのもはばかられているので、日々の生活費以外にろくにお金を使う機会もなく、多くの人がお金を貯めこんでいる状況なのではないだろうか。実際日本の貯蓄率は20年ぶりの高水準にまで高まったとの報道もあるし、米国でも貯蓄率の上昇が確認されている。在宅勤務で個人投資家が株式市場に参入しやすくなるなど環境が整ったことで、このようにため込んだ資金の一部が金融市場に流入しているとも考えられる。
それはそれでよいことなのだが、問題はこのバラマキでじゃぶじゃぶになった状態だ。貨幣供給量の増加は将来的なインフレ懸念へとつながる。この夕食会に参加した2人もいずれも今後の想定シナリオとしてインフレをあげた。(ちなみにここでいうインフレ懸念は日本だけというわけではなくグローバル(主に米国)を対象としている)
インフレ・ヘッジとなる資産クラス
インフレとは物価が上がる、つまりお金の持つ価値が下がるということだ。今日1万円で買えるモノが来年には10万円払わないと買えないという状況がインフレだ。買うモノ自体が変わらないのに支払う金額が10倍になっているということは、お金の価値が10分の1になったことを意味する。
このようにお金の価値が下がっていく可能性がある状況下、このままお金を現金として抱えていることは、長期的には得策ではない。インフレに強い資産クラスにはどのようなものがあるだろうか。
インフレ・ヘッジとなる資産クラス
インフレ・リスクをヘッジできる資産クラスとしては下記のものが挙げられる。
1)実物資産・コモディティ
2)株式
3)借金
それぞれについて深堀していきたい。
1)実物資産・コモディティ
インフレとはモノの値段が上がるということなのだから、投資対象としても実物資産・コモディティを選択するというのは得策だ。金・プラチナなどを保有すれば、物価が上がれば当然金価格・プラチナ価格も上がる。インフレに伴って価格が上がるのであれば、それはインフレに対するヘッジの機能を果たしている。トウモロコシや小麦などの農産物もインフレ・ヘッジ機能を持つコモディティとして挙げられるが、個人投資家がこれらに投資をするには一般的にはコモディティETFという形をとるしかないが、コモディティETFは仕組みが複雑であり、長期保有に適するものではないため、金・プラチナなどの貴金属保有を最適な例として挙げている。
2)株式
株式も基本的には物価に連動して上がる。理論上、物価が10倍になれば、株価も10倍になるので、株式に投資をすることによって、インフレに連動した資産運用が可能だ。ただし、インフレによって影響を受ける企業があり、業績が悪化すれば当然株価は下がるので、株式なら何でもよいという意味ではもちろんない。
3)借金
借金をすることも投資の一つだとすると、インフレが発生するような局面では借金をしていると有利だ。例えば4000万円の家を買い、毎月10万円を返済する住宅ローンを組んだとする。この場合インフレによって、来月払う10万円は今月払った10万円よりも価値が落ちている(あなたの負担は下がる)からだ。そもそも4000万円もインフレによって負担減となる。4000万円というお金の価値が下がっているからだ。
加えて、この時購入した家は「実物投資」という側面を持つので、家の価格はインフレに連動して上がる(儲けが出るという意味ではない)ので、インフレ・ヘッジという役割を果たしている。ダブルであなたに恩恵を与えるのが実は「借金」なのだ。
藤巻健史氏が借金をしろと言っているのはこういうロジックである。
ただし、お金を貸す銀行もバカではない。今は変動金利ローンの利率が非常に低位だが、インフレが起きた場合にはこの変動住宅ローン金利が跳ね上がる可能性がある。今後中長期的にインフレが起きる(得てして金利の上昇を伴う)と考える場合には固定金利の住宅ローンを組んでおくのが良い。これらは読者一人一人の金利観による。ちなみに足元、固定金利の住宅ローン利率も非常に低い。
今後のインフレ・リスクというのは2020年の後半くらいからかなり話題として挙げられていた。足元の金融市場の回復ばかりに目を奪われがちだが、今後は将来的なインフレを踏まえた投資行動が求められる。
持ち家派か賃貸派かで言えば賃貸派ですがインフレが起きると賃貸料も上がるんでしょうか?検討もしてませんでしたが固定金利で住宅を買った方が得だったり?
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大家は家賃の値上げを通告することができます。特に通告タイミングが決まっているわけではありませんが、毎回の更新期(通常2年に1回)に値上げを伝えることが多いようです。当然一方的に大家からの提案で値上げをすることはできず、値上げを拒否することも可能ですが、(大家が家賃の据え置きに同意しない限り)その場合は賃貸借契約が不成立となりますので、退去を求められる可能性があります。退去も辞さないのであれば通告に同意しなくても問題ないですが、急な引っ越しや引っ越し先のリサーチなどが難しい場合には値上げを受け入れざるを得ない可能性もあります。
住宅ローンを組む際に変動金利にするか固定金利にするかは非常に悩ましい種です。私も悩んでおります。歴史的な低金利環境で固定金利ローンの金利が非常に低いのは事実ですが固定金利期間(10年固定金利ローンの場合は10年)後の金利負担が大きくなるという欠点があります。例として某メガバンクで10年固定金利の住宅ローンを組んだ場合、最初の10年の金利は店頭表示金利よりも2.65%優遇されております(店頭表示金利が3.3%の場合、実際の10年固定金利の住宅ローン金利は0.65%)ですが、11年目以降の優遇幅は店頭表示金利の1.50%になってしまいます。
変動金利の場合、金利変動リスクは常に伴いますが、金利優遇幅は完済までの全期間で2.00%(上記の某メガバンク場合)なので、35年などフルにローン支払いを続ける場合は変動のほうが有利な可能性もあります。
固定金利で住宅ローンを組む場合は、その固定期間のうちにローンの大部分を繰り上げ返済することができる、もしくは目指す方にお勧めのローンです。
住宅ローンに関しても近日中にブログを書きますので、そちらもまたご参照ください。
そのほか、触れてほしいトピックなどございましたら、お気軽にリクエストください。