リモート・ワークについて考える

これまでコロナと投資について多くの時間（と労力）をつかって書いてきたが、ちょっと今回は気分転換にリモート・ワークについて書いてみる。

2020年3月から3か月間リモート・ワークをしているわけだが、これまで当たり前だと思っていたことの多くを見直すきっかけとなり、人生観・仕事観を大きく変えるものとなった。今の仕事環境はコロナによって半ば強制的に変えられたものであるが、今回のコロナ禍を契機に世の中が少しずつ変わっていくことを期待して、リモート・ワークについて考えていきたい。

当たり前だと思っていたけど、実はそうでもなかったこと

仕事をする上で、当たり前だと思っていることは多くあった。そして今回の長期間におよぶリモート・ワークを経験して、見直してもよいのではないかと思える点がいくつも浮かんだ。代表的なものとして以下のものが挙げられる。

・仕事とはオフィスでするものである

・ある程度の時間を通勤に充てるのは仕方がない

・リモート・ワークになるとサボるやつが出てくる

・リモート・ワークになると社員同士／客とのコミュニケーションが取りづらくなる

それぞれについて、詳細をみていきたい。

仕事とはオフィスでするものである

大学を出て働きだせば、同じユニフォーム（スーツや作業着、白衣など）を着て、一つの場所に集まり、そしてみんなで作業をする。世の中はそうして回っていると思っていた。僕は外資系の企業でしか働いたことがないので、わからない部分もあるが、会社によっては朝のチャイムが鳴り、昼休みのチャイムが鳴り、終業のチャイムが鳴る、、、まるで学校のように規律正しくみんなが同じ時間帯に同じような行動をして一日を過ごしていく。だから朝晩の電車は激混みするし、お昼時はレストラン、コンビニに長蛇の列ができている。それが当たり前の風景であり、一種、これが社会人になったってことなのではないかと思えるくらいに当たり前の大人の世界だと思っていた。

今回のリモート・ワークで分かったことは、少なくともパソコンさえあればできる僕の仕事はオフィスでやる必要が全くなかったということである。パソコンと外付けモニターが2台、そして携帯があれば僕の仕事はオフィスにいた時と全く同じようにできる。スーツを着る必要もないし、お昼休みだって仕事の進捗状況によって柔軟にとればよい。会社は高い金を出して都心の一等地にオフィスを借り、豪華な内装に仕上げ、設備を整える。そのすべてとは言わないまでも多くは必要ではないのではないかとさえ考えてしまう。その分のコストを浮かせ、社員に還元することも事業に投資するのもありだと思う。オフィスの必要性を考え直すことで事業資金の使い道にまで改善余地があるようにみえる。

ある程度の時間を通勤に充てるのは仕方がない

僕は都心のオフィスまで片道約1時間のところに住んでいる。ただ歩いて駅まで行き、電車に乗り、オフィスまでまた歩く。夜はこの逆。これだけのことに1日のうち12分の1の時間を充てていた。そしてそれが当たり前だと思っていた。

リモート・ワークになって思うのはこの2時間は非常に無駄であったということだ。当然通勤電車の中で読書をしたりして有効に活用していたが、それはリモート・ワークでもできることである。ただ家を出て会社に向かう時間というのは何の生産性もない。なんなら朝からただ疲れるだけのプロセスである。

リモート・ワークだとこの時間をより有効に使える。僕は通勤してた時と同じ時間に起き、同じように身支度をしたら、朝の1時間をしっかりと読書に充てている。電車に揺られながら読んでるのか読んでないのかわからない程度の意識で字面を追うのではなく、集中して本を読んでいる。読んでいるのは仕事関連の小難しい本の時もあるし、小説の時もあるし、その時々の気分で様々だが、通勤中に肩身を狭くして読んでいるときとは比べものにならないくらい捗る。だんだん頭もすっきりしてきて、よし、仕事を始めようとスイッチが入る。

帰宅時間に充てていた時間は夕食を作ったり、運動をしたりする時間に充てることにした。開いているレストランも少なかったし、外食・コンビニ飯ばかりでは健康に悪いと思い料理を始めたり、思い切って運動を始めたり。ただ仕事で疲れた体をより疲れされるだけに乗っていた帰りの電車での帰宅時間と比べるとはるかに建設的かつ健康的な時間の使い方ができている。体重もこの3か月で7kgくらい落ちた。非常にありがたい。

夜も長い。オフィス勤務時代に家に着いてやっと一息ついていた時間には食事を終え、ランニング中かランニング自体も終えている時間だ。最近はゲームをしたり、読書をしたり。平日でも趣味・娯楽に充てる時間が格段に増している。仕事以外のことをする体力が余っているのだ。

リモート・ワークになるとサボるやつが出てくる

これはもちろん職種や仕事内容によると思うが、僕のやっている仕事の内容的にサボることはあり得ない。（決して偏見でも何でもないが、可能性論として）外回りの営業であれば、客アポが入ってなければ喫茶店で時間をつぶしたり、よりひどくなるとパチンコに行ったりするような人もいるようだが、僕の仕事は基本的に時間が経てば経つほど溜まっていく仕事、常に手を動かしていないと減らない仕事なので、オフィスでも家でもどこでも、仕事を進めなくてはいけないという意識は強い。

ただし、仕事には波があるのでぽっかり穴が空いたり、物事がうまく進んで想定していたよりも早く作業が終わったりすることもある。リモート・ワークでありがたいのはそういう時は仕事関連の勉強に時間を充てたり、思い切って仕事を切り上げたりができるということだ。オフィスにいたら何かを「やっているフリ」をする必要があったかもしれない。そう考えるとリモート・ワークのほうが、より一層早く仕事をして早く終わらせたいという意識が働いていることに気が付いた。オフィス勤務ではどうせ18時くらいまでは帰れない。でもリモート・ワークであればやることさえ終わっていれば16時でも17時でも早めに切り上げても、少なくとも文句を言われる筋合いはない。リモート・ワークを通じて、サボるどころかより早く、効率的にやろうという意識が強まった。

リモート・ワークになると社員同士／客とのコミュニケーションが取りづらくなる

僕はコロナ禍の前から時々会社に言って在宅勤務をしていた。だから僕自身はリモート・ワークになっても全く問題なく仕事ができることは以前からわかっていた。ただし、今回は会社全体がリモート・ワークになったので、これまで自分だけ在宅勤務していた時とは異なることが一個だけあった。それは社員同士／客とのコミュニケーションが取りづらくなるのではないかという懸念だ。

幸い（？）、僕はそこまでお客さんと話す機会が多いわけではないので、コミュニケーションの問題は主に社員間にあると思った。

いざ、全員がリモート・ワークをするようになって思ったことは、そんなに困ることはないということである。まず無駄話が減る。もちろん必要事項の連絡をしたときに少し雑談したり、世間話をしたりすることはあるが、わざわざ無駄話のために電話をすることはない。電話をするときは常に何か急ぎで確認すること・連絡することがあるときに限られる。するとどうなるか。仕事時間のほとんどを非常に静かな環境で行うことができる。無駄話を振られることもないし、周りの無駄話が雑音として聞こえてくることもない。無音環境でやったり、好きな音楽を流したり。自分が最も快適だと思える方法で仕事ができる。これもまた仕事の能率化・効率化に寄与しているように思える。そして今は何よりもテクノロジーが素晴らしい。3人以上のオンライン会議も、チャットも、電話も手軽に低コストもしくは無料でできる。これも会社が高い金をオフィスに払う必要があるのかという疑問につながる。

特別だからこそリモート・ワークを奨励したい

ここまで読んで、たくさんの人はこう思うことだろう。こんな環境で仕事ができる僕そして僕の職種が特別なだけで、まだまだ多くの人は会社に行く必要があるし、みんながみんな在宅勤務、リモート・ワークができる仕事をしているわけではないと。

だからこそ、僕のような特殊な人は積極的にオフィス勤務から退却したほうが良いのではないかと思う。全業界・職種の中でどれだけの人がフル・リモートで問題ないかはわからないが相当数はいると思う。我々のような言葉を悪く言うとオフィス勤務において余分な人間は積極的に満員電車の解消、昼食の待ち時間の解消に寄与するべきなのではないだろうか。そうすればオフィス勤務が不可欠な人のストレスの軽減にもつながると思う。

もっと言えば、都心に住む必要さえない。地元や地方、田舎に引っ越して都心の不動産価格の低下や一極集中の解決、地方創生にだって微力ながら貢献できるのではないかとさえ思えてくる。

通勤が避けられない人がいるからこそ、避けられる人は身を引くべきではないだろうか。そうすればオフィス・スペースだって今よりも小さくて済むかもしれないし、リソースも必要な人により割り当てられる。交通費も削れて、住居手当も安く済むかもしれないし、会社の固定コストの削減にもつながる。

リモート・ワークでデメリットのある人はオフィス勤務を続けてもらい、リモート・ワークでメリットしかない人はリモート・ワークをしてもらう。

これによって両者ともデメリットはなく、それぞれのメリットだけを会社、社会は享受できるのではないだろうか。

そんなことを思う、今日この頃である。