コロナと投資7-1 たまには不動産投資の話


これまで「コロナと投資」と題して主に株式市場に焦点を当てて書いてきたが、今回は箸休めというか気分転換に不動産投資について書いていく。

コロナの影響で不動産市場にどのような影響が起きているだろうか。在宅勤務を利用して3週間ほど札幌に滞在しながら、見て回った経験をもとに書いていきながら、考えたい。

サマリー

・不動産価格に「大きな」影響はなし

・セカンドハウスとして買ったオーナーが売り急いでいる物件がねらい目

・資産性を考えた投資地域の選定が重要

不動産投資の特性

まずは、そもそも不動産投資とは何かについて簡単に述べたい。なお、ここでの不動産投資とは実物投資を指す。

不動産投資とは文字通り、不動産を買って、人に貸し、その賃料を定期的なインカム収入として享受しつつ、不動産価格自体が上がった場合には売却によるキャピタル・ゲインも狙うことができる。そんな投資である。

株式や債券などいわゆる伝統的資産と呼ばれる資産クラスの投資と不動産投資(実物)の違いとしては次のようなものが挙げられる。メリットおよびデメリットの観点からみていきたい。

伝統的資産と比べた不動産投資のメリット

・市場の影響を受けにくい。価格のボラティリティ(変動性)が小さい

・自分自身の関与の程度が高い

・資産性がある

伝統的資産と比べた不動産投資のデメリット

・流動性が小さい

・不動産価格の変動は小さいものの、インカム収入の変動は大きい

・金利リスク、ローン返済負担を負う

伝統的資産と比べた不動産投資のメリット①:市場の影響を受けにくい。価格のボラティリティ(変動性)が小さい

株価は買った直後から儲かることもあれば損をすることもある。一日で10%、20%価格が上下する可能性もあるし、下手をすればゼロになる可能性もある。

不動産の場合は、よっぽどのことがない限り、そこまで価格が変動することはない。買った不動産が翌月には価格が10%下がったというようなことは起こりにくい。そういった意味で投資資産の保全性・安定性は株式投資よりは高いといえる。

さきほど「よっぽどのことがない限り」と話したが、この「よっぽどのこと」には例えば、買った不動産が欠陥住宅だった、自然災害(放射能汚染など)等でその不動産またはその地域が住めない、もしくは住むのに適切じゃない状態になったなどが挙げられるだろう。可能性としてはゼロではないが、株価が10%、20%下がることに比べたら可能性は「低位」といえるだろう。

伝統的資産と比べた不動産投資のメリット②:自分自身の関与の程度が高い

これはメリットともデメリットともいえるかもしれないが、個人的にはメリットといえると思うのでこちらのカテゴリにした。自分の所有する不動産に人を入れるために例えば、内装をリノベーションする、賃料を競争的なものにする、そのほか特典を付けて自分の不動産の魅力度を上げるなど借り手(ひいてはインカム収入の)獲得のために自分自身が関与できる程度が大きい。

これが株式投資であれば、よっぽどの大株主でない限り、企業経営は経営陣に任せるほかない。もちろん株主も議決権行使を通じて経営陣に意見を言うこともできるが、正直個人投資家の関与の具合など企業全体でみればほとんど取るに足らないレベルのものであると言わざるを得ない。ただし、投資家から受け入れられなければ、企業の株価は下落し魅力度が減るので、経営陣は株価の維持・向上に努めなくてはならないという状況は変わらない。決して株式投資がいけないわけではない。あくまで自分自身の関与の度合いが小さいということだ。

「デメリットに感じるかも」と冒頭に述べたのは、この関与がめんどくさいと感じる人にはメリットではないかもしれないという意味だ。株は買っておけば後は野となれ山となれだが、不動産の場合には多少なりとも自分自身の努力が必要となるだろう。

伝統的資産と比べた不動産投資のメリット③:資産性がある

個人的にこれが一番のメリットかと思うが、不動産は保有していれば人に貸してインカム収入を得ることもできるし、自分で住むこともできる。自分が将来住みたいと考える場所に不動産を所有すればセカンドハウス、別荘として活用することができる。

株式投資であれば、こっちもよっぽどの大株主でない限り、企業からの恩恵は配当と優待、株主総会でもらえるお土産くらいである。別に投資先企業のオフィスの一部を貸してくれるわけでもないし、社員が肩を揉んでくれるわけでもない。

不動産投資は実物が残るのに対して株式投資はあくまでパソコンの画面上の数字がすべてといっても過言ではない。

賃料というインカム収入をもらいつつ、将来は別荘にする。そう考えるとなんとも夢のある話である。

だが、投資という言葉が付く限り、不動産投資も決して良いことばかりであるわけじゃない。

次に、不動産投資のデメリット(リスク)をみていきたい。

伝統的資産と比べた不動産投資のデメリット①:流動性が小さい

以前に述べたかもしれないが、流動性とは売買のしやすさである。株式投資であれば、「やべ、ミスった。多少損してでも早く売ろう」と思えば、買った1秒後から売却可能だ。逆にそろそろ値が上がったし、利益確定しようかなと思ってもすぐに売ることができる。

不動産の場合は買うのにも数週間~1か月ほどかかるし、売り手を探すとなるとより長い時間がかかるかもしれない。損失覚悟で売ろうと思っても買い手がすぐに現れるとは限らない。自分に余裕があるときは流動性が低くても良いかもしれないが、大体売ろうと考えているときは、はやく現金が欲しいと考えているときなので、売却を急ごうと思うとかなりの値引きが必要になることも多く投資として意味をなさないことも十分にあり得る。

伝統的資産と比べた不動産投資のデメリット②:不動産価格の変動は小さいものの、インカム収入の変動は大きい

不動産を買って、人に貸し、月々の賃料をインカム収入として受け取るという話をしたが、これはあくまで人が住んでくれているときだけの話であり、自分の不動産に人が入っていない場合は無収入、または後述するが、ローンの返済を考えると純マイナスのことも十分考えられる。空室を避けるために賃料の値下げ(インカム収入減)や内装の改善(コスト増)が必要となれば、投資による金銭的負担増となる。

伝統的資産と比べた不動産投資のデメリット③:金利リスク、ローン返済負担を負う

個人的にはこれが一番のデメリットというか、注意すべき点であると思うが、先ほどのインカム収入がちゃんと定期的に入るかわからないという状況の中で、毎月のローン返済は必ず求められる。変動金利でローンを組めば、将来求められる返済額に関する不透明感も高くなる。よっぽどの金持ちか、現金一括で物件を購入したのではない限り、不動産の購入には銀行からの借り入れをしているわけで、借金に対する返済は、インカム収入の有無を問わず求められる。

また仮に賃貸人がいたとしても、毎月の賃料がローン返済額と大差なければ、投資としてあまり有効ではないかもしれない。

ただし、個人的には人が勝手に自分の別荘のローン返済を手伝ってくれているという感覚になれれば、それはそれでアリな気もする。

このようにうまい話にはリスクがあり、リスクがあるとうまい話になる。それが投資であり、この特徴は不動産でも債券・株投資でも変わらない。

札幌でみた不動産市場の概況

6月に入ってから3週間ほど札幌でリモート・ワークをしながら、時間を見つけては不動産周りをしていた。

札幌の不動産市場を詳しくウォッチしているわけではないが、ここ2年程札幌に行くたびに不動産見学をしてきたが、個人的な感想として、下記の2点について強く感じた。

・新築マンションは相変わらず強気価格

・中古マンションは売りが多くなってきている印象

新築マンションは相変わらず強気

今回の滞在で新築マンションの見学に行ったが、相変わらず強気価格なように感じた。材料費・人件費が高騰している昨今、高値で売り抜かないといけないという事情もあるのだろうが、それでもコロナの影響など加味していないような、これまでの平常時と変わらない価格で売り出されているように感じた。実際にどのくらいの人が購入できるのかわからないが、少なくとも短期的に大きく値下がりするような感じはなかった印象である。

中古マンションは売りが多くなってきている印象

逆に中古マンションは売りが増えているように感じた。しっかりとデータをトラックしているわけではないが、築浅の物件も散見される。これに関して、これまで2年間程度の物件周りの経験から考察したい。何度もいうが、以下はデータではなくあくまで印象論である。

今回の札幌滞在で何軒か回った中で、不動産業者から聞かれたのは、元々セカンドハウスとして購入されて~や、中国人がオーナーで~など、住んでいた人が売りに出しているのではなく、そもそも住んでいない人が売りに出しているケースが多かったことである。

このように、足元の中古マンションの売却案件の増加はこれまでそれこそ別荘用や投資用に買っていた札幌外のオーナーが現金化のために売りに出しているのではないかということだ。札幌という立地を考えると道内でも場所によっては行くのに数時間かかるだろうし、内地から行くとなると多くの場合飛行機の距離だ。セカンドハウス、別荘用に買ったが、実はそんなに札幌に行くことも無くなって、コロナも相まって事業環境も良くないから売りに出したという人も多いだろうし、投資用で買ったが、それどころではなくなったという人もいるだろう。

そもそも投資用や別荘用で買える人の属性は中小企業の社長など、富裕な自営業の人が多いのではないだろうか。今回のコロナで打撃を受けている企業・業種は多いだろう。もしかしたらコロナ不況で保有資産の現金化を急いでいる人が相当程度いるのかもしれない。先述の「伝統的資産と比べた不動産投資のデメリット①:流動性が小さい」に起因する問題だ。

新築マンションの開発は大手企業が行っていることから、現金も潤沢にあり、札幌のマンションがすぐに売れなくてもそこまで影響はないだろう。しかし、個人所有の中古マンションとなるとそうもいかない。多少値下げしても早く売りさばきたいと考えている人がいたとしても不思議ではない。先ほどの「伝統的資産と比べた不動産投資のメリット②自分自身の関与の程度が高い」の負の側面(自分の意志で値引きできる)や「伝統的資産と比べた不動産投資のデメリット②:不動産価格の変動は小さいものの、インカム収入の変動は大きい」、「伝統的資産と比べた不動産投資のデメリット③:金利リスク、ローン返済負担を負う」に関連する問題だ。

以上のことを総合すると、現在は新築物件よりも中古物件に投資妙味が高いと考えられるかもしれない。特に、これまでセカンドハウス用として、必需ではなく贅沢として持っていた不動産は相対的に魅力的な価格で売りに出される可能性もある。

夏になるとコロナの感染も減っていくといわれていたが、どうも足元の感染者数の推移をみているとそうでもなさそうだ。コロナ禍は当分続くと考えられる。そうなると今後も現金化を急ぐ中小企業社長など富裕自営業の不動産オーナーからの投げ売りがみられるかもしれない。

ここまで長くなってしまったので、最後の「資産性を考えた投資地域の選定が重要」に関しては次のブログで詳しく分析を行いながら触れていきたい。

先週の株式市場

コロナの感染被害者数がなかなか沈静化せず、アメリカでは再び上昇傾向になることなどを受けて、コロナの感染第2波に対する懸念が台頭。株式市場は下がる展開となった。

ブログにて取り上げた銘柄も株価が下落する銘柄が多かったものの、それでもロング推奨銘柄は引き続きプラス圏を維持、ショート推奨銘柄は下落幅を拡大するなど、全銘柄でプラス・リターンを維持(ショート推奨銘柄に関しては株価の下落はプラス・リターンとして扱っている)

グロース株 推奨日株価 直近株価 騰落率
ロング推奨
任天堂(7974) 46,840 48,500 +3.54%
ソニー(6758) 6,706 7,519 +12.12%
スクエアエニックス(9684) 4,490 5,510 +22.72%
バリュー株 推奨日株価 直近株価 騰落率
ロング推奨
ナガセ(9733) 5,400 5,570 +3.15%
ショート推奨
ルネサンス(2378) 1,051 1,031 -1.90%
セントラルスポーツ(4801) 2,498 2,372 -5.04%


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