日本版FIREを考える その1 FIREとはなにか、なにを目指すのか


最近欧米で流行り、日本でも聞かれ始めた投資キーワードに“FIRE”というものがある。“FIRE”とは“Financial Independence and Retire Early”の略であり、つまりは「経済的独立を果たして、リタイアを早める」ということを指す。

「リタイアを早める」とは決して、「若くして仕事を辞める」ことだけを指すのではなく、「仕事をしなくても十分な資産を築く」という意味も含まれており、「生きるために働く」のではなく、「自己実現のために働く」というライフスタイルを目指すということだ。

FIREに関しては何冊か書籍が出ているが、欧米での事例はなかなか日本では適用しにくいというところもある。例えば、「友人とシェアハウスをして家賃を安く抑える」だったり、「長期休暇で不在となる家に管理人として仮住まいして家賃を浮かす」だったりはアメリカでは楽にできることなのかもしれないが、いまいち日本でやるのは想像がつかないということもあるだろう。

では、日本でFIRE達成のためにできることは何だろうか。という観点から、「日本版FIREを考える」というテーマでブログを書いていきたいと思う。

第1弾は「FIREとは何か、何を目指すのか」である。

そもそもFIREとは何か

先述の通り、FIREとは「経済的独立を果たして、リタイアを早める」ということである。金は誰にとっても大事なものだ。特に若い世代にとってこのFIREというものを意識することは特に重要となる。その理由としては、下記のものが挙げられる。
1)投資期間を長く持てる
2)喫緊の資金ニーズがない
3)景気サイクルをいくつも経ることができる

それぞれ詳しくみていきたい。

1)投資期間を長く持てる

投資期間を長く持てるということはそれだけ、複利効果を受けることができるということである。複利効果というのは例えば年率5.0%のリターンが見込める株式ETFを10,000円買ったとする。1年後にはこの10,000円は10,000×1.05=10,500円となる。
2年後はこの10,500円に5%のリターンが乗るので、10,500×1.05=11,025円になる。
10,000円に5%のリターンなのだから、毎年の増額分は10,000×5%=500円だと思われがちだが、2年目は1年目に増えた10,500円に5%のリターンがつくので、11,000円ではなく、11,025円となるのだ。なんだ、たかだか、25円の差じゃないかと思うかもしれないが、年数が経てば経つほどこの差は大きくなる。ちなみに10,000円に毎年500円ずつリターンが乗るのを「単利」と言い、前年の額に5%のリターンが乗ることを「複利」という。これを計算式に当てはめると下記の通りだ。
X円を年率r% でn年後運用した場合の元本は、
単利の場合:X+X×r%×n=X×(1+nr)
複利の場合:X×(1+r%)^n
となる。「^n」は「n乗」を指す。
つまり、単利が初項X、公差rXの等差数列(ただしn≧0)
複利は初項X、公比(1+r%)の等比数列(ただしn≧0)
なのである。
試しにX=10,000円、r=5%、n=30にした場合、単利と複利でどのくらいの違いが出てくるのかシミュレーションしてみよう。つまり、今の10,000円を単利5%と複利5%で回した場合30年後にはいくらになるのかということである。

ご覧いただく通り、最初の数年は大して単利と複利で違いは表れないが、差額は加速的に大きくなっていき、30年後には18,219円の差になる(単利が25,000円、複利が43,219円)。

では次に毎年10,000円を積み立てた場合はどうなるだろうか。計算はやや複雑になるが、エクセルを使えば簡単にできるので、図で示したい。

単利効果では毎年10,000円の積み立てで30年後に325,000円になるのに対して複利効果ではなんと707,608円、実に38万円以上の差が生じる。つまり倍の差がつくことになる。このように年数が多ければ多いほど、複利と単利の効果の違いが表れる。

投資期間を長く持てる、とはそれだけで複利効果を活かすのに役に立つことなのである。
ちなみに年率リターン5%なんて、非現実的だと考える人もいるかもしれない。確かに安全資産(元本の保全が可能)で年率リターン5%の投資商品なんて世の中にはない。広く米国株式市場全体に投資を行うETFであるVOO(バンガード・S&P500 ETF)の年率リターンはETF運用開始来14%だ。もちろんこれは非常にリターンが良かった時とリターンが悪かった時をならして、年率換算したものなので、年別でみるとマイナス6.23%のとき(2018年)もあるし、足元で一番年間のリターンが大きかったのは2013年の+29.67%である。上のエクセルの図のように一直線に右肩上がりではないものの、年率換算14%のリターンが挙げられるのは実に魅力的である。

複利効果を最大限に享受するためにも投資を早く始めるに越したことはない。極端な話、子供が生まれたらその子名義でETFの積み立て投資を始めるべきだ。学資保険に加入するよりもリターンは良い。

2)喫緊の資金ニーズがない

1)と関連するが、若いうちはまとまった資金が必要となるようなイベントが少ない。例えば結婚、出産、子供の学費、引っ越し、家の購入など、当然人にもよるが20代のうちにこれらのすべてを経験する人は少ないだろうし、経験するにせよご両親が健在であれば援助が入るかもしれない。なんにせよ、1)投資期間を長く持てるを実現するためにも、若いうちはとにかく浮いた資金を投資に回したほうが、将来得られる金額が大きくなる。
独身であれば家賃を低く抑えることも、食費を削減することも結婚しているよりも容易なはずだ。さすがに結婚した後に奥さんに極貧生活を強いることはできないし、強いたくないだろう。奥さんとのハッピーな生活を送るためにも、独身時代、まだまだ自分の財布に対して最大限の決定権を有しているうちに稼いだ金の多くを投資に回すのが良い。

3)景気サイクルをいくつも経ることができる

これも1)に関連して大事なことだが、経済には景気サイクルというものがある。景気は拡大、安定、後退、不況の4サイクルを順繰りに回っていくといわれている。例えば一番最近みられた不況はリーマン・ショックなどがあった2008年の金融危機が挙げられるだろう。この危機を乗り越え、その後経済は大きく回復し(拡大)、やがて成長曲線は緩やかとなり(安定)、次第に成長率は低減していって(後退)、最終的に再びマイナス成長(不況)となる。ご存じの通り、足元はコロナ禍によって世界経済は再びマイナス成長、つまり不況期に陥っている。この局面がどこまで続くかわからないが、また世界は成長局面をいずれ迎えることになる。
もちろん、これら景気サイクルは後付けであり、その変わり目を正確に判断することはできない。2018年に景気後退入りするかとみられたが、結局2019年も経済は堅調に推移し、このまま2020年も安定的に展開するだろうと思ったら、突然のコロナ禍である。これによって今経済は深刻な不況状態にある。大事なことは、景気サイクルを通じて投資を続けることである。これまで堅調な経済・景気に支えられて順風満帆で資産作りをしていたのに、2020年3月に投資をやめて資金を引き揚げてしまったら、これまでの上昇分をかなり台無しにしてしまったかもしれないし、もしかしたら上昇分がすべて吹き飛んで元本よりもマイナスになってしまっていたかもしれない。
その後世界は大きく回復し、依然として経済の先行き不透明感は強いものの、少なくとも株式市場・債券市場はともに相当程度値を戻している。焦りは禁物だ。長期投資を大原則としておくべきであることに変わりはない。

前述したVOOを2020年3月に売却していたら、2019年一年分の上昇分をすべて捨ててしまったことになる。2020年8月までにVOOの価格はコロナ禍前の水準まで回復している。たった5カ月待てたか待てなかったかで投資収益は大きく変わって来る。

このように、いくつもの景気サイクルを減ることで時に下げることはあれど、長い目でみれば上昇したところで資金を引き揚げることもできるのだ。一つの景気サイクルの中だけですべてを完結させようとすると、タイミングを間違えればこれまでの上昇分の相当部分をどぶに捨てることになってしまう。特に売りにおいて焦りは禁物なのである。

今回はFIREを特に若い時期から心がけることの大切さに関して3つの視点から話した。
次回以降は実際に私の考える「日本版FIRE」について考えていきたい。

推奨株価に推移

グロース株 推奨日株価 直近株価 騰落率
ロング推奨
任天堂(7974) 46,840 50,460 +7.73%
ソニー(6758) 6,706 8,524 +27.11%
スクエアエニックス(9684) 4,490 6,890 +53.45%
バリュー株 推奨日株価 直近株価 騰落率
ロング推奨
ナガセ(9733) 5,400 5,780 +7.04%
ショート推奨
ルネサンス(2378) 1,051 763 -27.40%
セントラルスポーツ(4801) 2,498 2,029 -18.78%

巣ごもり需要が予想以上に高く推奨したゲーム関連株の株価が高騰。いずれも大きく株価を伸ばし、スクエニに関してはストップ高になる勢い。

コロナ禍の長期化や第2波への懸念もあり、ナガセ(東進ハイスクール)も大きく上昇。今後の学習塾ビジネスのニューノーマルはオンラインがメインか。

スポーツ・ジム系は依然として大きく苦戦。いずれも決算状況が思わしくなく、足元の感染者の拡大もあって株価は大きく下落。ショート推奨銘柄はいずれも2桁マイナス。


Subscribe
更新通知を受け取る »
guest

CAPTCHA


0 コメント
Oldest
Newest Most Voted
Inline Feedbacks
View all comments