日本版FIREを考える その2 株式投資による配当と株主優待に関する再考


前回の投稿ではFIREの基本的な考え方および若い時期からの取り組みが如何に大事であるかについて複利効果を用いてお話しした。

前回の投稿
日本版FIREを考える その1 FIREとはなにか、なにを目指すのか

今回からは実際に日本でもできるFIREへの道を紹介していきたい。第1回目は株式投資による配当と株主優待ついてFIREの観点からその有用性をお話しする。

FIREを実現するために意識するべき数式

最初にFIREを実現するために意識するべき数式を考えたい。FIREとは“Financial Independence and Retire Early”の略であり、つまりは「経済的独立を果たして、リタイアを早める」ということを指す。
これを数式にすると下記のように言い表すことができると思う。

FIRE実現への道=(収入)-(支出)

簡単な数式であるが重要だ。詳細をみていきたい。

(収入)は自分に入ってくるお金のすべてを指すと考えよう。月々の給料だったりバイト代だったりが最も大きな収入となるだろうし、これに株であれば定期的に入る配当、不動産を持っていたら家賃収入・・・などなど、とにかく懐に入ってくる収入すべてと考えよう。お小遣いや臨時収入などもこのカテゴリに入るが、できれば定期的/安定的に手に入るものが望ましい。ある程度の予想がつくほうが管理がしやすいからである。

(支出)は自分から出ていくお金すべてを指すと考えよう。家賃や食費などの生活費、交際費、娯楽費、交通費・・・財布から出ていくお金すべてだ。こちらも衝動買いや散発的な飲み会などによる臨時出費よりも定期的/安定的に出ていくものにより注意を払う必要がある。

「FIRE実現への道」とはつまり(収入)の最大化および(支出)の最小化

これから書いていく「日本版FIREを考える」ブログはこの「収入の最大化」、「支出の最小化」のどちらか、または両方に焦点を当てていく。

今回は株式投資による配当と株主優待をこの観点からみていこう。

配当収入は「収入の最大化」に寄与

配当収入とは保有している株の会社が収益の一部を株主に還元(お返し)することで得られる収入である。当然会社がしっかりと十分な収益をあげていないと、株主に返金する配当もないわけで、そういう意味で経営状況の良い会社にしっかりと投資をすることが重要となる。配当をするかどうか、またいくら配当するかは会社の判断に委ねられており、会社によっては配当しない場合もあるので注意が必要だ。

配当を実施するタイミングも会社によるが、大体が半期に1回、または四半期に1回行う企業が大勢であろう。これは定期収入として考えることができる。

配当に関しては先行きが読めない部分もあるが、配当利回りをみることで株式間の配当の良し悪しを比較することができる。配当利回りとは株価に対していくら直近配当しているかの割合である。

株主優待は「支出の最小化」に寄与

会社によっては株主優待を出すところも多い。特に日本株では魅力的な株主優待を出す会社も多いのでリサーチしてみるといろいろと面白い。

株主優待には自社製品をもらえることや割引券・利用券、Quoカードなど現金代替物など会社によってまちまちである。後者の現金代替物の場合は(収入)の側面が強いが、自社製品や割引券・利用券はどちらかというと支出に関連するので、こちらにスポット・ライトを当ててみたい。これらの株主優待を受け取ることで本来支出するはずだった額を節約することにつながり、そういう意味では「支出の最小化」に寄与すると考えられるからだ。

このように、配当と株主優待についてFIREの観点から考えると株式投資はFIRE実現のための有力な方法の一つということができる。

FIRE実現のために有用な銘柄

では、FIRE実現のために有用な銘柄は何だろうか。まず大前提として株式投資であるから、価格が安定していて、下がる見込みが低い銘柄というのが重要となる。ただし、これはある意味投資の永遠のテーマなので考え始めたらきりがない。もう少し寛容に「つぶれない(=上場廃止にならない、つまり株価が0円にならない)会社」という風に考えれば大企業であればおおよそ大丈夫と考えよう。

さて、では大企業の中でどのようにしてFIRE実現のための銘柄を選べば良いだろうか。一つの指標は先ほど述べた配当利回りの高さで考えることである。配当を出す頻度も半期よりも四半期のほうが魅力的なるだろう。このように配当を中心に考えると「収入の最大化」につながる。一方で「支出の最小化」はおざなりになる側面もある。配当利回りが高い銘柄の株主優待が常に最良とも限らないからだ。

では株主優待から考えるとどうだろうか。自社製品や割引券・利用券が送られてきても、そもそも欲しいものでなければ無用の長物だ。これでは「支出の最小化」にはならない。また、株主優待が良くても配当利回りが高いとも限らない。

「収入の最大化」と「消費の最小化」、一兎を追うか、二兎を追うか

どちらかに特別な思い入れがある場合はいずれかを追求すれば良いだろう。それはそれで戦略として間違っていない。ここでは第3の手段、つまりどちらもある程度享受する銘柄について考えていきたい。二兎を追い、二兎を得ることを目指す戦略だ。

ある程度の配当利回りとある程度の株主優待を享受できる銘柄とは何だろうか。

株主優待の利回りを計算する

株主優待がQuoカードや図書券などの現金代替物であれば、その額を株価(投資額)で割れば利回りは計算できる。しかし大体が1単元株あたり500円~1000円分の現金代替物なので、利回りとしては低位に出がちだ。自社製品であれば、小売価格を調べれば、それを株価(投資額)で割れば一応の利回りは計算できる。ただし、小売価格を払ってまで欲しいかどうかは人によるのでこの利回りにどれほどの意味があるのかは難しい。割引券・利用券も同様に割引額、利用券で浮いた額を株価(投資額)で割れば利回りは計算できる。実はこの割引券・利用券の利回りに「株主優待の利回り最大化」のポイントは隠されている。

株主優待の利回り最大化その1

XX円分の割引、XX円分の利用券であれば、XX÷株価(投資額)が利回りになる。これも一般的には低位になりがちだ。1回限りに割引であれば、現金代替物同様あまり意味をなさない。

しかし会社によっては1年間何回も使える割引券・利用券を株主優待として提供してくれるところがある。

例えばサンマルク(3395)の株主優待は下記のようなものだ。

サンマルクホールディングスグループ全店において割引が受けられる優待カード
100株の保有で「サンマルクカフェ」、「鎌倉パスタ」などで20%割引(すし処函館市場は10%)有効期限…7月1日から、翌年の6月末日まで

つまり、1年間無制限に優待を利用することができ、何回でも20%割引を受けることができる。500円のコーヒー代が毎回100円引きだ。仮に毎日平日サンマルクに通い、500円分の飲食をしたとすると1カ月の利用で浮く金額は100円×20日間=2000円、1年間続ければ2000円×12か月間=24,000円になる。本来払うはずだった24,000円を浮かすことができる。ランチや夕食に単価がより高い鎌倉パスタに行けば割引額はより大きくなる。

仮に24,000円浮かしたとすると、現在(2020年8月12日)の株価が1550円なので、100株保有するのに1550円×100株で155,000円。株主優待の利回りは24,000円÷155,000円=15.5%となる。1回限りの優待と違って、使用回数に制限がない場合にはこのように自分の行動次第で優待利回りを最大化することができる。

すべての株主優待を調べたわけではないが、もう同じように何回でも利用できる株主優待を利用できる企業に三越伊勢丹ホールディングス(3099)がある。ここの優待は利用限度額が保有株数によって設けられているが、最小でも利用限度額は年間30万円なので、相当数通うことができるだろう。適用される店舗によって割引割合は異なるので詳細はご自身で確認してもらいたいが、三越伊勢丹の百貨店が10%、クイーンズ伊勢丹(スーパー)が5%である。

100株で限度額30万円なので、年間30万円の買い物を百貨店でしたとすると割引額は3万円。FIREを目指すならそんな贅沢はしないかもしれないが、より現実的にクイーンズ伊勢丹で日々の買い物を年間30万円することは考えられるだろう。その場合の割引額は15,000円。

同じく2020年8月12日現在の株価は567円なので、100株で56,700円。56,700円で日々の買い物を最大割引額15,000円分したとすると、優待利回りは15,000円÷56.700円=26.5%である。非常に高利回りだということができるだろう。

ちなみに高島屋も三越伊勢丹と同様の優待サービスを有している。こちらは500株以上で利用限度がなくなる。

このような制限のない、もしくは制限があっても限度額が大きい株主優待を提供する会社はサービス業に多い気がする。足元、サンマルク、三越伊勢丹、高島屋のいずれもコロナ禍の影響で非常に割安な株価で推移している。今、これらの株を買って、この優待が続く限り永久保有と位置づけた場合、非常に高位な優待利回りをずっと享受することができる。

ちなみに、二兎を追うのだから、ちゃんと各社の配当利回りも確認したい。

サンマルク(3395)の配当利回り:2.95%(1株当たり44円)
三越伊勢丹(3099)の配当利回り:1.79%(1株当たり9円)
高島屋(8233)の配当利回り:3.15%(1株当たり24円)

高配当株とは言えないかもしれないが、高位な優待利回りを享受できる中しっかりと定期配当も得られるのは大きい。特に高島屋、サンマルクの配当は比較的高いといえる。

株主優待の利回り最大化のポイント

優待利回り最大のポイントは利用限度がないこと、もしくは限度額が十分に大きいこと。そして身近に優待店があることだ。家の近所や職場の近くにサンマルクがあって、日々の昼食をサンマルクにしようと決めれば、毎日昼食費を100円以上浮かせられるかもしれない。最寄りのスーパーがクイーンズ伊勢丹であれば買い物費用が5%引きだ。

わざわざ遠方のサンマルクまで電車や車で行っていては本末転倒だ。移動にかかる費用と時間がもったいない。これではFIRE実現の道が遠のく。買い物であればママチャリを漕いで少し遠くに行っても良いが、それも持続可能な範囲に限られる。行くのも嫌になる距離では優待なんか受けないほうが幸福度は高いかもしれない。あくまで自分の生活実態に則した銘柄選定が重要だ。

株主優待の利回り最大化その2

株主優待の利回り最大化のもう一つの方法はアカウント分けである。

例えば、サンマルクの株主優待が魅力的だったとしよう。サンマルク株を200株買えるだけの資金があるとする。1人で200株保有するとどうなるか。

これでも結局受けられる優待は100株と変わらない。もらえる優待カードは1枚だ。

ただし、1人が200株持つのではなく例えば夫婦、両親、兄弟など1人が100株保有×2人をするとする。投資額は同じく200株×株価なのだが、この場合は株主としてのカウントは2人となるため、当然もらえる優待カードは2枚になる。こうなれば、それぞれが同時に別々の場所で割引優待を受けられることになり利便性は2倍だ。

高島屋の場合、利用限度をなくすために500株買う必要はない。こちらも例えば1人が100株保有×2人をすれば、限度額30万円の優待カードが2枚もらえ、実質限度額は60万円と倍増する。限度額は引き続きあるが、その枠は500株買わなくても拡大することができる。

これは株主優待は株主名簿で管理しているからである。したがって、同一個人がたとえばSBI証券とマネックス証券と別々の証券口座で100株ずつ保有していても意味はない。この場合は株主名簿に記載されるのはあくまで1人のため、もらえる優待も1人分だけだ。あくまで複数アカウント(個人)で保有することに妙味がある。

最小限の資金で最大限の経済効果を享受しよう。

FIRE実現のための提言

FIRE実現のためのキーワードは

「収入の最大化」と「支出の最小化」である。

これからの生活では常にこれを意識することが重要となる。今回は株式投資にこの考えを当てはめてみた。このように考えれば投資銘柄の選定に新しい観点が生まれるかもしれない。

株主優待の詳細に関しては下記のサイトが非常に有用だ。ご参考までに

https://www.kabuyutai.com/


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