いま最もアツい投資テーマの一つ、「農地投資」を考える その3 食糧需給の今、そして未来


前々回は農地投資の概要についてお話しし、前回は農地投資の魅力の一つとして「伝統的資産、景気循環性の低さ」について紹介した。

今回は「2)食糧ニーズは今後も高まり続ける一方、食糧供給は需要に追い付けない状況」についていくつかの観点から今、そして未来の食糧需給について考えていきたい。

2)食糧ニーズは今後も高まり続ける一方、食糧供給は需要に追い付けない状況

需要と供給の2つの面からそれぞれみていきたい。まずは「食糧ニーズは今後も高まり続ける」と考えられる背景についてだ。

食糧ニーズは今後も高まり続ける理由

食糧需要の増加要因としては下記の2つを挙げることができる。
1)世界人口は今後も増加を続ける
2)中所得者層の増加を受けて、肉食が普及。家畜の飼育ニーズが穀物ニーズを高める

1)世界人口は今後も増加を続ける

まずは、世界人口の増加予測をみていきたい。下記は国連による2050年までの世界人口の増加予測をグラフ化したものだ。グラフにある通り、世界人口は2050年には100億人に迫る勢いで増加している。そして特筆すべきは中所得者層の増加だ。中所得者層が増えるということは、それだけ食糧に支払える所得が上がるということだ。

では、実際に世界の食糧需要はどのくらい伸びるといわれているのだろうか。下記に農林水産省が調査した、世界の食料需要の変化を2000年と2050年で比較したものである。

これをみるとわかる通り、2000年対比で2050年は食料需要が1.6倍になると試算されているご覧いただく通り、伸びが特に大きいのは中間国および開発途上国だ。これらの国では所得が増えることによってより豊かな食生活を営むことができるようになる。これが食糧需要を高める一つの要因として挙げることができる。

2)中所得者層の増加を受けて、肉食が普及。家畜の飼育ニーズが穀物ニーズを高める

中所得層の増加の話しに関連して出てくるのが、「肉食の普及」である。なぜ肉食が増えると食糧需要に影響を及ぼすのだろうか。
まずは世界の肉食需要が今後どのように推移していくのかというのをみていきたい。

上記は1人・1年あたりの肉類消費量の推移を記載したものである。ここでは世界平均、日本、中国の記載があるが、日本も中国も自国の経済成長を背景に国民1人当たりの所得も増加、それに伴い肉類消費量が年々高まっているのがご覧いただけるだろう。今後も特に新興国では食習慣が欧米スタイルにより近づいていくと考えられており、そうなると肉食が増えることになる。

さて、「農地」と聞くと「人間の食べ物を栽培する」と直感的に考えてしまうが、当然農地で育てる作物のすべてが人間の食用というわけではない。特に一年生作物は家畜のエサ用としてのニーズも多く存在する。想像に難くないが、人間が食べる量と家畜が食べる量では当然家畜のほうが多いわけで、今後肉食がより増加することで、家畜へのニーズも当然高まり、最終的に一年生作物栽培用農地への高位な需要も引き続き期待できる。下記は農林水産省のレポートから抜粋してきた畜産物1㎏生産するのに必要な穀物量であるが、同じ量の畜産物を得るのにより多くの穀物を必要とするという意味で肉牛は非常に効率が悪いことがわかる。

また、下記は国連の食糧農業機関(Food and Agriculture Organization、FAO)が統計を取っている世界における家畜(肉牛・鶏・豚)の飼育数(左軸)と穀物収穫高(右軸)の推移である。こちらをみると、肉食のための家畜数が年々堅調に増加していることがわかる。また、同様にして穀物収穫高も年々増えている。


以上のように、1)人口増加に伴う需要増、および2)肉食を支えるための家畜のエサ用の需要増というダブル・パンチを受けて、食糧需要は今後も増加すると予想することができる。

続いて、「食糧供給は需要に追い付けない状況」についてだ。

食糧供給は需要に追い付けない理由

下のグラフは1人当たりの耕作可能農地面積(青線)と地表に占める耕作可能面積(オレンジ線)だ。人口が増加している中、耕作可能農地はそのペースで増加していないわけだから当然、1人当たりの耕作可能農地面積は下落の一途だ。また、気候条件、土質条件などを勘案すると地表に占める耕作可能面積にも限度があり、過去55年ほどで約1.0%しか増えていない。食糧需要は今後も増加するとみられる中で、耕作可能農地面積、つまり食糧供給に利用できる農地には限界があるのだ。

今はまだ健在化してきていないが、今後は食料戦争というか食料を巡る貿易対立が深刻化する必要はある。昨今の米中貿易摩擦、貿易交渉だって食料安全保障の側面があるのを忘れてはいけない。食料の争奪戦になった場合には農地に対する需要も大きくなることは想像に難くない。

このように、需要は今後も拡大していくことが考えられる中で、供給地である農地面積には限界がある。

これが「2)食糧ニーズは今後も高まり続ける一方、食糧供給は需要に追い付けない状況
」に関して、今世界で起きている状況だ。
では、このまま世界は食糧を求めて争うことになるのだろうか。食料安全保障が脅かされるような展開となれば、投資どころの話ではなくなってしまう。

農地面積の物理的な拡大に限界があることは純然たる事実である。これに対抗するというのが、農地投資の魅力の3つ目、「3)生産性向上のための技術革新や農学・農法の発展余地がまだ高く、今後も堅調な推移が予想される」である。

詳細は次回のブログにまわすことにする。

参考サイト、文献、データ元

食糧農業機関(Food and Agriculture Organization、FAO、家畜数や耕作可能農地面積などのデータを活用)
http://www.fao.org/faostat/en/#home

国連(人口予想データを活用)

https://www.worldbank.org/

農林水産省(食料需要や肉類消費量のデータを活用)

https://www.maff.go.jp/chushi/jikyu/pdf/shoku_part1.pdf


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