米国大統領選挙を終えての今後の市場見通し


11月3日に世界が注目された米国大統領選挙が実施された。

世論調査ではバイデン氏が常にリードするといった状況であったが、ふたを開けてみると(ある意味で予想通り)両者は接戦となった。

僕の政治的な意見は置いといて、郵便投票はやや疑念が残る部分もある(「不正」というよりも「杜撰な運営」といったほうが正確な気が現時点ではしている)が、それを差し引いてもバイデン氏勝利は少なくとも今のところは固いだろう。

結局サプライズなしの平和な大統領選挙だった。めでたしめでたし。で終わればよかったのだが、実はあまり日本では報道されていないが、今回の選挙ではサプライズがあった。今回のブログでは簡単にではあるが、この「あまり報道されていない、けど実は結構重要なサプライズ」に関して書いていく。

大統領選挙と同時に行われたそのほかの選挙

11月3日、世界中が注目した米国大統領選挙の本選挙が行われたわけだが、実は同日米国上院と下院の選挙(改選)も行われていた。

こちらも大統領選挙同様民主党有利といわれ、大統領選挙、上院、下院すべてで民主党が勝利を収める「ブルー・ウェーブ」を予想する市場関係者が大きかった。

しかしふたを開けてみると、大統領選挙と下院は民主党が勝利(一応今のところは確実視という表現にとどめる)するだろうといわれているが、上院は共和党が過半を死守する見込みだ。あまり日本では注目というか報道がされていないように思われるが、上院を共和党が勝利したことは実はバイデン氏勝利よりも大きい意味合いを持つ。上院と下院で過半数政党が異なる「ねじれ状態」になったことから、バイデン氏は当初掲げていた政策の実施や政権運営が今後は十分にできなくなる可能性があるからだ。

バイデン氏が当初掲げていた政策として特に市場関係者が注目していたのは下記のものだ

1)コロナ禍対策としての追加的な景気刺激策(短期的には◎、長期的には×)

2)(富裕層を対象とした)個人所得税・法人税・(投資による)キャピタル・ゲイン税の増税(短期的には×)

3)インフラ投資(〇)

4)規制強化(△)

それぞれの政策の後に記載した括弧書きの中は市場への影響だ。一つ一つもう少し細かくみていきたい。

1)コロナ禍対策としての追加的な景気刺激策(短期的には◎、長期的には×)

民主党、共和党ともにコロナ禍への対策として追加的な景気刺激策を打ち出すことに関して異論はないのだが、民主党のほうが共和党よりも想定する実施規模が大きかった。民主党が約2.2兆ドル、共和党が1.8兆ドル程度をそれぞれ計画していた。このような規模の違いにはそもそものこの2党間の政治観の違いによるところが大きい。民主党は大きな政府(行政による積極的な関与)を良しとする政党、共和党は小さな政府(自由市場に重視)を良しとする。このような政策的な違いが今回の追加的な景気刺激策においても出た形だ。

今回、共和党が上院の過半を維持する見込みが強まったことで、バイデン氏は当初掲げていたほどの規模で追加的な景気刺激策ができるかどうか雲行きが怪しくなってきた。詳しくは米国の立法権について各人で確認してほしいが、米国は上下院が立法権を有しており、最後に大統領の署名をもって可決される。つまり、下院が民主党=バイデン氏の意向に沿った政策案を出しても、上院がこれを否決すれば、最後の大統領による署名=法律の成立まで行かないのだ。

したがって、バイデン氏、民主党が相当程度共和党の意向を勘案した景気刺激策を策定しないと打ち出すことができない。したがって、当初バイデン氏が大統領選挙活動中に掲げていたほどの刺激策は実行できないのではないかと考えられているわけだ。当然、共和党も何でもかんでも反対をしていれば、米国経済は二番底に落ちる可能性があるので、何らかの景気刺激策が打ち出されるとはみられているが、両党間でどのような折衷案になるのかに関しては注目する必要がある。

元々、バイデン氏の大規模な景気刺激策(悪く言うと「バラマキ」)は決して市場で大きく歓迎されていたわけではなく、米国の財政問題の長期化、低金利環境からの脱却の困難化など長期的には米国内経済の重しになるとの懸念もあった。そういう意味では今回の上下院のねじれ状態はポジティブなサプライズとして受け止められている見方もある。

2)(富裕層を対象とした)個人所得税・法人税・(投資による)キャピタル・ゲイン税の増税(短期的には×)

こちらも1)で話した大きな政府・小さな政府に絡んでくるが、上院(=共和党)が増税を受け入れるとは思いにくい。(富裕層への)所得税増税はまだ良いとして、法人税増税は富裕層だけでなく、そのほかの米国国民にとってもめぐりめぐって悪影響をもたらすものであり、コロナ禍収束の目途が立っていない中での増税は広く歓迎されていなかった。こちらは今回のねじれ状態で成立はしないだろうとみられている。

3)インフラ投資(〇)

バイデン氏は再生可能エネルギー関連のインフラ投資を通じて労働市場の改善を図るとしている。いわゆる公共事業だ。共和党が化石燃料系エネルギー企業とずぶずぶなところがあるため、上院でどのような議論がされるのかわからない部分はあるが、(共和党支持者を含め)環境問題への国民の関心は高いとみられることから、共和党も大きく反対はできないのはないかといわれている。この分野は特にトランプ大統領政権下で米国は世界的にも出遅れている分野であるので、今後インフラ投資が進むと期待されている。

4)規制強化(△)

金融業界や化石燃料系エネルギー産業への規制強化が予想されている。規制強化は自由なビジネス活動の足かせとなる一方、産業の過度なリスク選好や腐敗などを防ぐという効能もあるため、一概に規制強化=悪ともいいにくい。こちらも何らかの規制強化が特に金融、化石燃料系エネルギー産業を中心に入るとみられている。

このようにみてみると、バイデン氏勝利+上院の共和党勝利は米国経済にとっては非常に良いのではないかととらえることができる。基本的には安定した政治運営を行いつつも、行き過ぎたバラマキや増税に対しては共和党が牽制できる形だ。

ところで今の市場の関心

もはや大統領選挙は過去のもの、今一番の市場の関心事はコロナウイルスに対する有効なワクチンの開発状況だ。ファイザーが有効ワクチンの開発が進んでいるとの報道を受けて、市場は大きく上昇する展開となったが、足元の欧米(そして日本も決して例外ではない)での感染者数の増加は懸念の種となっており、連邦政府や州政府から営業自粛要請がなかったとしても小売業の自主的な自粛や、消費者の巣ごもりも想定されており、景気低迷が長引く可能性もある。

目まぐるしく移り変わる市場環境だが常に最新トピックに目を向ける必要がある。

グロース株 推奨日株価 直近株価 騰落率
ロング推奨      
任天堂(7974) 46,840 54,480 +16.31%
ソニー(6758) 6,706 9,326 +39.07%
スクエアエニックス(9684) 4,490 5,610 +24.94%
       
バリュー株 推奨日株価 直近株価 騰落率
ロング推奨      
ナガセ(9733) 5,400 5,840 +8.15%
ショート推奨      
ルネサンス(2378) 1,051 838 -20.27%
セントラルスポーツ(4801) 2,498 2,227 -10.85%

 

コロナ禍の最悪期に推奨を出した日本株は、多少の上下はあるにせよもはやロングもショートも負けない領域に達している。足元コロナウイルスの感染者数がまた増えてきていることも踏まえると、巣ごもり需要を惹きつけられる株は今後も堅調に推移するし、スポーツ・ジムは苦戦が続くだろう。

グロース株 推奨日株価 直近株価 騰落率
ロング推奨      
ビヨンド・ミート(BYND) 181.86 124.74 -31.41%

 

さて、問題なのは米株のほうだが、2020年第3四半期(7~9月期)の決算が市場予想よりも悪かったこと、コロナウイルスの感染者数増加を受けて再び外食需要が減少するだろうとの懸念などから足元は30%超まで推奨日から下落している。

個人的には当社株は115~125ドルのレンジで追加投資することができており、平均購入単価は155ドル程度まで引き下げられている。業績は今後回復するとみられるが、コロナ禍が当面の重しとなるだろう。今後も120~140ドルのレンジで推移するとみており、もう10株ほど追加投資しても良いかなと思っている。

最後に本の宣伝

「コロナ・ダイエット」という本を出版しました。キンドルのアプリがあればスマホ、タブレットなどでお手軽に読めますので、興味ある方はぜひ。

https://www.amazon.co.jp/dp/B08JMCF9TH


Subscribe
更新通知を受け取る »
guest

CAPTCHA


0 コメント
Oldest
Newest Most Voted
Inline Feedbacks
View all comments