年末なのに何かと忙しい日々が続いている今日この頃である。
前回のブログでは長らく続いたグロース株の覇権が崩れ、バリュー株の巻き返しが起こるのではないかということをお話しさせていただいた。
2021年の米国株式市場に対する展望の第2弾として、今回はセクターに注目したいと思う。来年はディフェンシブ・セクター対比景気敏感セクターを強気にみているが、その背景に関して下記の3点にトピックを絞ってお話ししたい。
景気敏感セクターがアウトパフォームすると考える3つの根拠
1)財政出動による景気刺激策への期待感
2)コロナ禍とワクチン開発・普及
3)足元の状況と今後の上昇余地
一つずつみていきたい。
1)財政出動による景気刺激策への期待感
事前の世論調査と比べると激戦・接戦となった米国大統領選挙だが、バイデン新大統領の誕生が無事確実視されるようになった。ただし、こちらも以前のブログで書いたが、バイデン新大統領の誕生そのものよりも2021年1月に予定されている上院の決選投票に市場の関心は集まっている。
当決選投票では上院2議席が争われるが、両議席を民主党が勝利した場合には議席数は民主党50、共和党50と拮抗することになる。この場合上院で意見が割れたときは副大統領に決議権が与えられることになり、民主党有利な状態となる。
当然共和党も両議席の死守に動くものと思われ、1議席でも守れれば、上院は引き続きねじれ状態となる。詳細はすでに述べているので、ここでは深く掘り下げないようにする。
足元、上院は共和党が過半を占めるだろうとの見方が強く(直近の世論調査では65%が共和党の過半を予想)、ねじれ状態が継続するとみられる。
このような状況になった場合、バイデン政権による政治運営は共和党(上院)の思惑も相当程度配慮したものとならざるを得ず、大規模な景気刺激策による多額の財政出動、所得税、法人税等の増税政策は共和党からの賛同が得られず、難航、内容の緩和などが予想される。
打ち出される内容がどうなるのかはまだ不明瞭な部分が残るが、民主党、共和党ともに追加的な景気刺激策が必要なことに関しては意見が一致している。足元では9000億ドル規模の景気刺激策が打ち出されるのではないかとの見方が強い。このような経済対策は景気敬服にとって望ましいもの、好ましいものであり、景気回復・金融市場の下支えに寄与すると期待される。
では市場の安心感(投資マネー)はどこ流れるのかということを考えると、景気回復による恩恵を受けやすいセクターではないかと考える。
というのも、ヘルスケア・セクターやテクノロジー・セクターなど、景気敏感性が低く、不況時でも堅調に推移する傾向が強いセクター、いわゆるディフェンシブ・セクターはすでに相当程度上昇しており、すでに年初来でプラスのリターンになっているセクターも多くあるほどだ。こういったディフェンシブ・セクターはすでに上昇余地があまり残されておらず、今後一層の上昇は割高感が意識されることにつながるかもしれない。
そうなると足元でも年初来でマイナスとなっているエネルギーや不動産、小売、航空、レジャーなど景気敏感セクターが人気になる可能性が考えられる。
2)コロナ禍とワクチン開発・普及
金融市場とは分けて考えられがちなワクチン開発と今後の普及状況だが、これは経済・社会が正常化へ向かうための起爆剤であり、救世主でもあるという意味では、立派な「景気刺激策」ということができる。
足元、米国も、日本も含んで世界的にコロナ禍による感染被害は拡大傾向にあり、予断を許さない状況になっているが、ワクチンの開発・普及は着実に進んでおり、今後米国でもワクチンの接種が一般市民へと拡大していくこととなれば、経済・社会は大きく正常化へと舵を切るであろう。
そうなるとどうなるか。
経済・社会が正常化へと向かえば、外食が増え、レジャーが増え、旅行が増えるのではないだろうか。このような景気敏感セクターを下支えするような消費者行動がみられれば、ディフェンシブ・セクターをアウトパフォームする展開になるかもしれない。
3)足元の状況と今後の上昇余地
これまで、追加的な景気刺激策、コロナウイルスに有効なワクチン開発の話をしてきたが、では論より証拠、実際の株式市場はどうなっているのかをみていきたい。BloombergでRussell Indexのデータが取得できないので、今回はS&P500指数などを使って説明していきたい。
下記はS&P500指数のうち、自動車および自動車部品セクター、銀行、資本財、耐久消費財およびアパレル、複合金融、エネルギー、素材、半導体、運輸セクターの株式200種を単純平均した指数(BCSUCYCL)と、同じくS&P500指数のうち、食料品、飲料&タバコ、食料&生活必需品、ヘルスケア機器およびヘルスケア・サービス、製薬バイオテクノロジー&生命科学、通信、公益セクター株式119種を単純平均した指数(BCSUDEFS)の2020年年初来からのリターンを100で指数化したものである。
ご覧いただけるように、緑線のディフェンシブ・セクターは白線の景気敏感セクター対比下落幅が小さく、その後も堅調に推移していることがわかる。ただし、大統領選挙後は景気敏感セクターの巻き返しが著しく、2020年12月14日時点で景気敏感セクターがディフェンシブ・セクターをわずかながらアウトパフォームしている(年初来で景気敏感セクター106.98、ディフェンシブ・セクター106.49)。
出所:Bloomberg、2020年12月14日時点。
同じ比較を当四半期来(2020年9月30日~2020年12月14日)で比較すると、景気敏感セクターの強さはより鮮明になる。
出所:Bloomberg、2020年12月14日時点。
前四半期末(2020年9月30日)を100とすると、足元ディフェンシブ・セクターのリターン(緑線)が106.98なのに対し、景気敏感セクター(白線)は124.16と高位なリターンを記録している。今後もこの地合いが続き、1)景気刺激策による景気下支え効果および2)コロナウイルスへの有効ワクチンの開発・普及による経済・社会の正常化を受けて、今後も景気敏感セクターがディフェンシブ・セクターをアウトパフォームするとみている。
結論:来年は景気敏感セクターが盛り返す年になると予想
以上3つの観点から、来年は景気敏感セクターがディフェンシブ・セクターをアウトパフォームするだろうと予想する。すでにそのような兆候がみられているが、来年はこのトレンドがより強まるだろうとみている。
いつもの推奨銘柄パフォーマンス・アップデート
グロース株 | 推奨日株価 | 直近株価 | 騰落率 |
ロング推奨 | |||
任天堂(7974) | 46,840 | 62,230 | +32.86% |
ソニー(6758) | 6,706 | 9,783 | +45.88% |
スクエアエニックス(9684) | 4,490 | 6,440 | +43.43% |
バリュー株 | 推奨日株価 | 直近株価 | 騰落率 |
ロング推奨 | |||
ナガセ(9733) | 5,400 | 5,540 | +2.59% |
ショート推奨 | |||
ルネサンス(2378) | 1,051 | 938 | -10.75% |
セントラルスポーツ(4801) | 2,498 | 2,284 | -8.57% |
引き続き感染者数が過去対比最悪状態になっているが、春ごろほど人々の関心も警戒感も薄い状況だ。この状況だと年末年始も出かける人は出かけ、感染する人は感染するだろう。日本の経済および株式市場は引き続き下押し圧力が続くとみられている。株式市場は再び勝ち組銘柄と負け組銘柄の間で明確な乖離が出てきている。
ロング銘柄は基本的に堅調。年末年始の巣ごもり需要期待でゲーム・セクターの株が好調。
前回失速していたオンライン学習塾大手のナガセだが、今回は回復。そもそもあまり売買されていない銘柄ではあるが、基本的にはプラス圏内でずっと推移しており、コロナ禍局面においても魅力的な銘柄であることに変わりはない。
続いて米株
グロース株 | 推奨日株価 | 直近株価 | 騰落率 |
ロング推奨 | |||
ビヨンド・ミート(BYND) | 181.86 | 138.70 | -23.73% |
ビヨンド・ミートは140ドル手前で停滞。投資資金も入ったことなので、今週中に追加投資を検討中。ただし、詳しくは次のブログで書くが他にも買いたい銘柄もあるため、とりあえず平均購入単価を150ドル以下にしたところでやめようかとも考え中。
最後に本の宣伝
「コロナ・ダイエット」という本を出版しました。キンドルのアプリがあればスマホ、タブレットなどでお手軽に読めますので、興味ある方はぜひ。
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