先週の続きで住宅購入の話である。
というのも、最近家を買ったので、割と自分の中でもホットな話題であるためにいろいろと実体験を踏まえて書いていきたいと思う。
まずは、おそらく多くの人がお世話になる住宅ローンを今回はしたいと思う。
住宅ローンといっても、結構金融機関によって金利水準や内容、審査の厳しさなどは異なるので、ここでは一般化して話せることに終始する。
住宅ローンと聞くと真っ先に浮かぶのが、住宅ローン金利なのではないかと思うが、実は住宅ローン金利と同じくらいもしくはそれよりも重要なのは、住宅ローンの返済手段がある。なぜかというと、「住宅ローン金利は残債(借りた金の残額)にかかる」からだ。一見当たり前のことのようだが、このことをしっかりと理解している人は実は少ないように思うし、自分自身の経験上ちゃんと説明している銀行も少なかった印象だ。
このブログでは以下の3点について話したいと思う。
1)元利均等返済について
2)元金均等返済について
3)元利均等返済と元金均等返済どっちのほうが「お得」か
1)元利均等返済について
よほどのことがない限り、どのこの銀行も住宅ローンを組むというと、この元利均等返済を勧めてくる。彼らの言い分は「元利均等返済はローン終了まで月々の返済額が変わらなくて、資金計画が組みやすいですよー」というものだ。これがもはや常套句となっており、多くの人は、「そうなんだ~よくわかんないけど、じゃあそれでいいか」という軽い気持ちで銀行に言われるがまま元利均等返済にしてしまっているように思う。
当たり前のことだが、あなたに何かモノを売りつける(今回の場合は住宅ローン)場合に、売り手が買い手(あなた)のことを慮ってくれるなんて思わないほうが良い。これは不動産購入のすべてのプロセスにおいて私が感じたことだ。
銀行があなたに元利均等返済を勧める理由は「元利均等返済のほうが支払総額が元金均等返済よりも高い」からだ。つまり、銀行からしたら、より多くのお金をあなたから取ることができるために、元利均等返済を勧めてくるのだ。
元利均等返済とはその名の通り、毎月の返済額(元金支払いと金利支払いの総額)が均等であるという意味だ。35年の住宅ローンを組んだ場合、あなたの毎月の返済額は35年間(420回の返済月)ずっと一定だ。
ここで何が問題になるかというと、元利均等返済は毎月の返済額が一定であるがゆえに住宅ローン支払い開始当初は金利支払いの割合が多く、実は元金返済に充てられている金額は少ないというところだ。だからこそ、総支払額が多くなる。
先ほど、「住宅ローン金利は残債(借りた金の残額)にかかる」をあえて括弧書きで強調したが、残債の減少スピードが遅ければ当然、その分支払う金利返済分は大きくなる。
元利均等返済とは皆が嫌っている「リボ払い」と同じスキームであるのだ。
銀行によっては後述する元金均等返済にしか対応しておらず、そもそも元金均等返済を選択できない銀行もあるので注意が必要だ。
2)元金均等返済について
元利均等返済とは違うもう一つの支払い手段を用意してくれている銀行は多い。それが元金均等返済だ。こちらも読んで字のごとく、毎月の元金返済が一定であり、月々の返済利子額が異なる支払い方だ。
元金均等返済について質問した時、銀行担当者の返答の常套句は「元金均等返済は支払い当初の支払額が大きく、負担になりますよ~」というものだ。
確かに、支払い開始当初は残債が大きいため、金利負担も大きい。しかし、毎月元金部分が一定額でどんどん減っていくので、毎月ごとに返済額は小さくなっていく。これも先ほどの「住宅ローン金利は残債(借りた金の残額)にかかる」が効いてくるからだ。
当初の支払額が高いのはその通りだが、毎月数十円~数百円単位(金利と借入金による)で返済額が減っていくというメリットもある。また、元金部分がどんどん減っていくので最終的な総支払額も元利均等返済よりも小さくなる。銀行担当者が勧めたくないわけだ。
3)元利均等返済と元金均等返済どっちのほうが「お得」か
1)、2)で元利均等返済と元金均等返済のメリット・デメリットを文章形式で書いたが、整理すると下記の通りだ。
元利均等返済のメリット
・月々の返済額が元金均等返済よりも安い
・月々の返済額が一定なので資金計画が立てやすい(らしい)
元利均等返済のデメリット
・住宅ローンの総支払額が元金均等返済よりも高くなる
・「返済額が一定で資金計画が立てやすい」というが、元金均等返済は毎月どんどん返済額がどんどん低くなっていくので、元金均等返済だと計画が立てにくいということはないと個人的には思ってしまう。むしろ老後まで返済が続く場合は、若いうち(健康で給料が安定的に確保できるうちに)多く支払って、徐々に返済額が低くなるほうが、計画が立てやすいのではないかと個人的には思ってしまう。
元金均等返済のメリット
・返済総額が元利均等返済よりも少なくて済む
・毎月徐々に返済額が少なくなっていくので、だんだん返済負担が軽減されていく
元金均等返済のデメリット
・返済開始当初の支払い負担額は元金均等返済よりも数万円程度高いので、大きなお金が動いた後も、しばらくは相対的に大きな返済負担が続く
私がちょっと元金均等返済贔屓なところがあるので、そこのバイアスは割り引いて考えてほしいが、上記の通りそれぞれのメリット・デメリットを書き連ねてみてもやはり私には元金均等返済のほうが魅力的に映る。
では、実際に返済総額はどのくらい変わるのか、ということだがここでは例として5000万円のローンを組んだ場合、元利均等返済と元金均等返済でどのくらい差額が出るのかを考えてみる。
1)5000万円の住宅ローンを0.425%で35年間借りた場合:74,435円
2)5000万円の住宅ローンを0.8%で35年間借りた場合:292,797円
3) 5000万円の住宅ローンを1.25%で35年間借りた場合:742,494円
上記は1)が変動金利、2)が10年固定金利、3)35年固定金利、のそれぞれの概ねの金利水準で算出したものである。0.425%だと35年間で7万4千円ちょっとしか変わらないじゃん、とみえてしまうが、正直0.425%という超低金利が今後35年間続くという保証はどこにもなく、変動金利であるため、いつ金利が上昇しても文句は言えない。そういう意味では少なくとも一定期間は固定である固定10年、または35年固定金利で比較したほうが現実的な比較となる。そうなると、35年間でそれぞれ30万円弱、74万円弱返済額が変わってくるため、7万4千円の差の時よりもだいぶ印象が違うのではないだろうか。このくらいの額大したことないという人であれば、問題ないが、塵も積もれば山となる、という風に大きな違いにみえる人には、元金均等返済という選択肢も考慮に入れてほしい。
上記は5000万円で比較したが、住宅ローンの借入額を変えても、当然総支払額は変わってくる。金利変化は同じ条件で今度は1億円借りた場合で返済総額の差はどうなるのかみてみよう。
1)1億円の住宅ローンを0.425%で35年間借りた場合:184,286円
2)1億円の住宅ローンを0.8%で35年間借りた場合:652,261円
3) 1億円の住宅ローンを1.25%で35年間借りた場合:1,589,155円
こうみるとどうだろうか。借入額が大きくなると当然、住宅ローン金利がかかる残債が大きいため、総支払額の差も拡大する。ここまで変わってくると、元金均等返済の魅力が増すのではないだろうか(宣伝)
ここまで元利均等返済と元金均等返済の特徴をみてきたが、最後に私がいろいろ考えて達した、うまい住宅ローンとの付き合い方について書いていく。真新しい内容ではないかもしれないが、究極的には多くの人がこの結論に至るのではないかと思う。
住宅ローンとの付き合い方
住宅ローンを含め、借金をしたときに大事なことは、如何に借りた金以上の金を返さないかということである。理想的には借りた金額の分だけ返済すれば良いようにできれば、借入期間に余裕がある分、好都合である(いわゆる無利子で借りる、ということだ)。さすがにそこまではできないとしても如何に借入額に対して返済額を抑えるのかというのは借金をしたときは常に頭に留めておきたい事柄である。
元利均等返済にしようが元金均等返済にしようが、借金をしたときの大原則は変わらない。それは「住宅ローン金利は残債(借りた金の残額)にかかる」ということだ。逆を言うと、「残債を少なくすればするほど、住宅ローンの金利支払い額も小さくすることができる」ということだ。
そんなことができるのだろうか。
繰り上げ返済に全力をかける
35年の住宅ローンを組んだからと言って、別に律義に35年間払い続ける必要はない。コツコツと貯めたお金がある、ボーナスが入った、車を売った、理由は何であれば、手元に余分に返済に充てても良いと考えるお金があればどんどん繰り上げ返済を使って、借金返済に励むと良い。
元利均等返済であっても元金均等返済であっても、繰り上げ返済分はすべて元金返済に充てられる。したがって、元金部分が減れば、その分かかってくる住宅ローン金利返済分も変わるということだ。大事なことなので何度も言うが、「住宅ローン金利は残債(借りた金の残額)にかかる」のだ。残債(掛け目)が小さくなれば住宅ローン金利が多少高くても、絶対値としての返済額は小さくなるのだ。特に変動金利はすでに歴史的な低さとなっており、ここから一層の金利低下は想定されにくいし、低下したとしても低下幅にもそろそろ限界がある。だったら、もう一つの変数である残債部分をどんどん小さくしていくことで返済額を小さくすることができる。そして、繰り上げ返済は残債額が大きい時にすればするほど効果が大きい。したがって、借入初期にどんどんしていくことが重要なのだ。
より細かく話すと、繰り上げ返済には「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2つがある。いずれも読んで字の如くだが、簡単に2つの特徴下記にまとめる。
繰り上げ返済方法:期間短縮型
月々の返済額は変えずに、返済期間を短くする方法である。毎月の返済負担額は変わらないが、返済期間は短くなるので、支払金利の抑制効果が高い繰り上げ返済方法である。
繰り上げ返済方法:返済額軽減型
返済期間は変えずに、毎月の返済額が繰り上げ返済したことにより、繰り上げ返済前よりも小さくなる。支払い金利の軽減効果はあるものの、期間短縮型よりもその効果は薄い。ただし、毎月の返済額負担は軽くなるという利点はある。
私が住宅ローンを組んだ時は、変動金利で元金均等返済にした。銀行担当者からは、散々元利均等返済のすばらしさを語られたが、断固として元金均等返済にしろと譲らなかった。ここまで読んでもらえればその理由は理解いただけるだろうが簡単にまとめる。
理由1:総支払額を1円でも安く抑えたい。
>>人から金を借りといていうのも不躾だが、上述の通り如何に返す金額を抑えるかという観点に立つと、元金均等返済のほうが断然好ましい。
理由2:繰り上げ返済との相乗効果大
>>元金均等返済でそもそも元利均等返済よりも元金返済スピードが速いのに、それに加えて、繰り上げ返済も私はどんどんしていくつもりだ。当然期間短縮型だ。1000円でも2000円でもしていきたい(繰り上げ返済はネット経由でする場合には手数料無料だから遠慮なくがんがん返していける)。そう考えると、元利均等返済で繰り上げ返済をするよりも元金均等返済で繰り上げ返済も組み合わせるほうが断然有利だ。
理由3:全期間返済額が一定よりもだんだん返済額が減っていくほうが将来不安が解消される
>>これについては人によって意見が異なると思うが、私はアリさんタイプなので苦労は先にして、将来大きく楽をしたい性格だ。また、近い将来のことは遠い将来よりも予想が立てやすい(今後5年間に病気になるかどうかは、今からの日々の節制や生活習慣の改善で相当程度制御・予測可能だが、25年後にどうなっているのかを今5年先ほど容易に予測することはできない。健康面もそうだし、ステータス(結婚、子供の有無、子供の進学なども含む)もより近い将来のほうが予想がしやすい)。毎回の返済額を抑えられる・返済額がずっと変わらないという今から受けられる恩恵よりも、返済初期の返済総額が高いという今受ける不利益を享受することで、返済額がだんだん減っていく、返済総額が低く抑えられるという将来受けられる恩恵を享受できるほうに私は幸せを感じるタイプだ。これに理由2で述べた繰り上げ返済も組み合わせることで、より一層返済総額を低く抑え、初来的な返済負担を小さくできる。
経済合理性を追求した結果、私の至った結論は「元金均等返済」で「期間短縮型繰り上げ返済」に全力をかけることで、「借金の返済額を可能な限り減らす」というものだ。
例のごとくここまでで大作となったので、住宅ローンの話は次回にする。