本業が相変わらず殺人的に忙しいことに加え、諸々「課外活動」をしており、なかなかこちらのブログが更新できずすみませんでした。
少し日が空いてしまったが、今回は前回の続きで金利の話をしていきたいと思う。
金利といっても銀行の普通預金金利、10年国債利回りである長期金利、サラ金の金利まで金利にはいろいろと種類があるが、皆さんの人生にとって大きな影響を与える、住宅ローン金利についてお話しする。
前回のブログでは金利と不動産価格について説明した。具体的にはそちらの投稿を読んでいただきたいが、簡単に総括すると、金利が上がると、不動産価格は下がる、金利が下がると不動産価格は上がる(現在の状況)というように金利と不動産価格は反比例の関係にある。結局、金利がどうなろうと元金と金利支払いの両方を合わせた総支払額はほとんど変わらないようになっている。したがって、「不動産の買い時」なるものはなく、あなたが欲しいと思ったとき、かつ欲しいものが買える状況にあるとき、としか言えない。大きな買い物なので慎重に用心深くなる気持ちも分かるが、最後はえいやっ!と思い切って買ってしまう心意気も重要だ。
さて、今回は住宅ローン金利の大きなテーマである、固定金利と変動金利についてお話しする。こちらは住宅ローンを組む際の大きなテーマであり、人や本によってもそのスタンスは様々だ。
簡単に各支持者の言い分を下記の通りにまとめる。
固定金利で住宅ローンを組む派の人たちの言い分
・今は歴史的に低金利環境であり、この低水準で金利水準を固めてしまうのが良い
・変動金利は確かに非常に魅力的なくらい低金利だが、いつ銀行が金利を引き上げるかわからず、先行き不透明感がある。固定金利にすればこのような日々の不安から解放される
変動金利で住宅ローンを組む派の人たちの言い分
・固定金利と比べて変動金利は0.1~0.2%ほど金利が低い。わざわざ高い金利にする必要はない。
・変動金利はいつ上がってもおかしくないというが、実際に過去に引きあがった試しはほとんどなく、今後も引きあがるとは思えない。変動金利はいつだって固定金利に変えられるんだから、金利が上がりそうだったら、その時に固定に切り替えればいい。わざわざ今それを行わなくても良い。
こんなところだろうか。
正直これに関しては両者もっともな言い分なため、優劣をつけることはできない。物事には常に良い面と悪い面があり、その両方を理解したうえで、どちらが自分の好みなのかを考えることが大事だ。
固定金利と変動金利の良い点・悪い点
固定金利と変動金利の良い点・悪い点は下記の通りだ。
固定金利の良い点
・長期にわたって金利水準を固定することができる
・歴史的にみれば固定金利の金利水準もかなり低い
固定金利の悪い点
・変動金利と比べると金利が高い
・金利の優遇幅が変動金利よりも狭い
「金利の優遇幅が変動金利よりも狭い」についてちゃんと理解している人は実は少ないように思うので、ここで説明する。
固定金利や変動金利には店頭表示金利というものがあり、それぞれ「参照金利(あとで詳述する)にプラスで何%かを銀行がのせた値」が店頭表示金利となる。
某赤い銀行の2021年5月22日時点での金利水準と店頭表示金利は下記の通りだ。
ご覧の通り、変動金利の店頭表示金利は年2.475%、固定3年が年2.94%、固定10年が0.74%だ。ここからそれぞれ2%、2.60%、2.65%の優遇(割引)がついて、最終的に負担することになる金利は0.475%、0.34%、0.74%となる。
固定金利のほうが優遇が良いと思われるかもしれないが、注意するべきは、固定金利期間終了後の優遇金利だ。
変動金利は完済までずっと2%の優遇が続くのに対して、固定金利は固定期間終了後の優遇幅が大幅に悪化する(2.60%→1.75%、2.65%→1.50%)。当初の固定期間の金利水準は低くかつ固定にすることができるが、その後は完済まで金利優遇が悪く、総じて割高な金利を支払わなくてはならなくなる。
この点について固定金利を好む人はしっかりと気を付けないと、トータルでみて不必要に返済額が大きくなってしまう可能性がある。
次に変動金利の良い点と悪い点をみていこう。
変動金利の良い点
・金利水準が非常に低い
・金利の優遇幅が完済まで変わらない
変動金利の悪い点
・いつ金利水準が変わるかわからないという先行き不透明感が常に付きまとう
・実際に金利が上昇した場合には返済負担が高まる
ご覧の通り、結局両者甲乙つけがたく、どちらか一方がもう一方よりも絶対的に良いというわけではない。
金利動向を常にチェック
固定金利にしようが変動金利にしようが最終的には好みによるといえるが、検討の際に注意してほしいのが、それぞれの「参照金利」である。つまり、固定金利や変動金利の水準はどうやって決まっているのか、ということだ。住宅ローン金利を決める際に参照する金利について理解することで、固定か変動か、どちらかを選ぶのかの参考になるだろう。
固定金利(ここでは10年固定金利について取り扱う)は日本の長期金利(10年国債利回り)の水準を参照して10年固定住宅ローン金利が決まる。では日本国債の10年債利回りの変動はどうなっているのだろうか。
日本国債10年債利回りの推移
1988年からの最長期間のデータでみると、「過去最低水準にある」という固定金利賛成派の人の言い分が正しいことがわかる。しかし、もう少し期間を短くし、直近5年の金利変動をみると下のようになる。
非常に低金利であること(マイナス金利の時もある!)のは変わらないが-0.3%~0.15%くらいのレンジで結構上下に動いていることがわかる。
固定金利をいつ組むタイミングによっては、0.1~0.3%くらい上下することに注意が必要だ。過去5年でみると足元金利は高水準にあるため、金利動向のチェックは常にしておいたほうが良い。
続いて、住宅ローンの変動金利の参照金利だが、こちらは短期プライムレートというものを参照している。短期プライムレートが何かについては各自ググればいくらでも出てくるのでここでは説明は省く。
短期プライムレートの推移
長期金利と異なり、1999年から2021年までリーマン・ショック前のバブル時を除き、ほぼ短期プライムレートは一定であることがわかるだろう。リーマン前が1.375%、リーマン後の足元までが1.475%だ。これをみると、過去20年間超においてはほとんど金利上昇がみられていないため、変動金利勢のほうがおいしい思いをしていることがわかるだろう。
正直現在、そしてこれからの日本経済を考えると短期プライムレートが2%を超えるような時代が来ることがあるのだろうかと考えると、なかなか難しいのではないかと個人的には思うのが、皆さんがどう思うのかは自由だ。
注目するべきは日銀総裁が代わるタイミング
金利の変動要因にはさまざまなものがあり、それらが相互に複雑に絡み合っているため、予測するのは難しい。専門家ならまだしも、私のようなド素人があれこれ言ったところで時間の無駄のようなものだ。
長期金利も短期プライムレートにおいても、今後どうなるのか、私にはまったくわからないが、変曲点があるとすれば、2023年4月だ。
2023年4月に何が起きるのかというと、現日銀総裁の黒田東彦さんの任期が切れる。ご存じの通り、黒田総裁は黒田バズーカと呼ばれる異次元量的質的緩和で金利を下げることに情熱を燃やしてきた人だ。それによって、黒田総裁就任後恩恵を受けた不動産オーナーも多いことだろう(思い出してほしい、金利が下がると不動産価格は上がる)。
彼の任期が切れ、次期日銀総裁が誰になるかによっては住宅ローン金利にも大きなインパクトがみられるだろう。厳密にいうと、次期総裁候補の議論が始まるくらいから金利は反応するだろう。
そう考えると、黒田総裁が急病などで突然辞任しない限り、今後2年間は現在のような低金利環境が続くだろう。
次期日銀総裁候補の議論が始まるのは2022年半ばごろからかなと思うが、次の人が黒田総裁のような低金利続けようぜ派なのか、金利低すぎるから少し上げときますね派の人なのかはぜひ報道等でウォッチしてほしい。
最後に私の考え
いろいろあれこれ言っておいて、私の考えを示さないのは良くないので、個人的な戦略を最後に紹介する。
これまで書いてきた通り、黒田総裁時代が続く限り低金利状態が続くだろうと考える。また、次期総裁が誰になるかはわからないが、日本経済のオワコンさ(少子高齢化、みるに堪えない財政状況、上向く可能性がない景気)を考えるとずっとこのまま低金利環境が続くだろうと考える。
先ほど、固定金利は固定金利期間終了後完済までの優遇幅が悪化すると話した。逆を言うと固定金利期間中の金利は非常に優遇されている。それを私は逆手に取る。
住宅ローンを組む当初は変動金利でスタートする。そして、「あと10年で完済できるな」という見込みが付いていて、かつ、金利が上がりそうもしくは実際に変動金利が上がっているのなら、そのタイミングで固定10年金利に切り替える。もちろん金利が上がる可能性が一向にみえなかったらそのまま変動金利のままでも良い。変動金利は先行き不透明感に悩まされるといったが、逆を言えばいつでも戦略変更ができる選択権を有しているともいえる。固定金利にしてしまったら、少なくともその期間は何もできない。そして、そのあと優遇幅の悪化との戦いもある。
両者の良い面を最大限に生かし、悪い面を最小限にするために、「当初変動金利、返済の見込みが付いたら固定10年などに柔軟に切り替える」。これが私の戦略だ。
そして、これは以前にも書いたが、借金をしたとき、総返済額(借りた金+支払う金利支払い)を最小限に抑えるのに最も有効なのは、繰り上げ返済である。借りた金をどんどん返していけば、残債にかかる金利支払いが少なくなり、結果として総支払額を低位に留めることができるのだ。これは変動金利でも固定金利でも同様だ。
当初変動、将来固定金利を検討。全期間において繰り上げ返済に尽力。
これが最も総返済額を抑える必勝法となる。