就職活動と投資の共通点②


前回のブログの続きで、就職活動と投資の共通点について探っていきます。前回は就職活動においてみられる「大志なき活動」の危険性について話しました。今回は投資における「理由なき投資」について書いていきます。

本屋に行くと「これから上がる注目株10選」とか、「プロが教える投資のテクニック」なる本が腐るほどある。

よく言われることだが、上がると思う株や投資テクニックを紹介して、多くの人がそれを取り入れてしまうと、株価が早期に上昇してしまい、中長期的な上昇幅が限られてしまう。もしくは短期的に過度な上昇がみられれば、調整の売りが入りやすくなる。

いずれにしても、人に上がると思う株を教えるべきではないし、投資の必勝テクニック(なんてものが本当にあるのなら)誰にも言わないほうが良いに決まっている。結局人に何かを共有してしまった時点で、その情報は陳腐化してしまい、有益な情報じゃなくなるのだ。

絶対リターンと相対リターン

投資リターン(パフォーマンス)を測る方法は2種類ある。絶対リターンと相対リターンだ。

絶対リターンとは、絶対値として、リターンがプラスなのか、マイナスなのかを測ることだ。当然投資リターンにおいては絶対リターンはプラスであることが望ましい。これはある意味当たり前で、投資でそもそもマイナスを狙う人なんかいないのだから、投資をする人は全員が絶対リターンの向上を目指す。

投資力(目利き力と言ってもいいかもしれない)を測る方法がもう一つの相対リターンである。つまり「ほかの人と比べてどのくらいより良いリターンを獲得できたか」を測ることだ。世の中にいる投資家一人一人のリターンを把握することはできないので、相対リターンは市場全体(日本株であれば日経平均指数やTOPIX、米国株であればダウ工業株平均やS&P500指数など)との比較で測ることになる。

日経平均株価が5%上昇しているときに、Aファンドは3%しか上昇していない、Bさんは8%もリターンをあげた。ということは、Aファンドは(相対的に)パフォーマンスが悪い一方で、Bさんのパフォーマンスはピカイチだ、というように比較感で投資の優劣を測るのだ。

投資と群衆行動・群集心理

ほかの人と同じことをしている限り、人以上の投資リターンをあげることはできない。投資の勉強をする際に、「これから上がる注目株10選」とか、「プロが教える投資のテクニック」なる本をたくさん読むことは大いに結構だが、結局、ほかの人と違うことをした人、そして、それが当たった人だけが、そのほかの人(市場全体)よりも高いリターンを得ることができるのだ。そういう意味で私は常に逆張り、投資の教科書の内容は理解したうえで、それとは違うことをしろとこれまでもブログで何度も書いてきたし、私自身もそうするように心がけている。このブログでも何度か投資テーマや私の考えに言及しているが、それはあくまで、私ならこう考える、こういう風な分析の仕方をして投資をしているという考えのプロセスを紹介しているだけだ。私のブログを読んで同じ銘柄を買ってくれるのは大いに結構だが、正直それで一番儲かるのは(私のブログを参考にしてくれた)あなたではなく、私自身であるということに注意したほうが良い。私のブログだけでなくすべての投資本に同じことが言える。

投資とは群衆行動・群集心理との戦いである。人と違うことをしているのは不安だし、アテが外れたら、人よりもパフォーマンスが悪くなる。みんなが儲けているときに自分だけ損をしていたり、みんなほど良いリターンをあげられなかったりしたら、腹が立つ。逆に人と同じことをしているのは何より安心できることだし、仮にパフォーマンスが悪くてもみんな悪かったら、何となく慰めにもなる。

そんなわけで、多くの人は人と同じことを、教科書通りのことをしようとする。アマゾンが良いといわれれば、アマゾン株を買い、アップルがイケてるといわれればアップル株を買う。これからはテスラの時代だなんて言われたら、具体的にどの辺がテスラの時代なのかわかんなくてもとりあえず買っておく。

そうやって「理由なき投資」をした結果、すでに相当程度上昇している割高株をつかまされて、期待していたほど儲からない、もしくは買った後すぐに株価が下がる、というような憂き目に遭うのだ。

「みんなと同じことをしているのに、なんで自分はいつもうまくいかないんだ」という声をよく耳にするが、まさに「みんなと同じことをしている」から「うまくいかない」のだ。

偉そうに話しているが、私も何となく勢いのある株を買って、直後に大暴落している保有株もあるし、自分なりにしっかりと考えて、中長期的目線で買って、プラス・リターンで推移している銘柄もある。

これは決して株式投資だけの話ではない。

不動産投資だって、例えば「都心ワンルームが最強」、「中古アパート一棟保有でリスクの分散」など、「これこそが必勝法だ!」と言わんばかりの不動産投資本やサイト、動画が溢れている。

しかし、この「必勝法」が世に知れ渡ってしまい、多くの人が「都心ワンルーム」、「中古アパート一棟」に集まったしまった結果、不動産価格が高騰してしまい、高値で物件をつかまされて、結局「思っていたのと違う!」という結果になりかねない。

情報、ノウハウとして仕入れておくのはいいが、このような大衆向けの情報を鵜呑みにするのは良くない。株式投資でも不動産投資でもどんな投資でも、結局この手の投資でうまみを得られるのは一番に動いた人、つまり、「何の情報もない中、自分なりに答えを見出して動いた投資家」ということだ。こちらも就活生同様、二番煎じ以降は十分にリターンを得ることはできず、最初の投資家の餌食になるだけだ。

「なんかよくわかんないけど、最近株価が上がっているから」、「何の会社かわかんないけど、テレビで社長が儲かっているといってたから」、「投資本にワンルーム・マンションを買えって言っていたから」。このように自分で考えたわけでも分析をしたわけでもない、つまり上がる(もしくは上がっている)理由がわからないまま投資をした「理由なき投資」は非常に危険なのである。

勝ちに不思議な勝ちあり、負けに不思議な負けなし

大学での講演において、学生から受けた質問の一つだが、私の考える重要な投資マインドについて。

あなたは全知全能な神ではないし、だれも全知全能の神ではない。あなたが「理由のある投資」を行った結果、それがうまくいったとしても、あなたのアテ(上がると考えていた材料)が当たったから儲かったのか、まったく関係のない要因で儲かったのかわからない。

投資でうまくいくと、「自分はもしかしたら投資の才能があるのかもしれない」、「自分の分析は人よりも優れている」と考えがちだ。しかし、百発百中で全戦全勝する投資家なんかどこにもいない。「投資の神様」と呼ばれるウォーレン・バフェットだって、全保有銘柄でプラスのリターンをあげているわけではない。

投資リターンに一喜一憂するべきではない。今回はよくわからないけど、儲かった。でも次はこう上手くはいかないかもしれない。結果におごることなく、中長期的に良いものを見定めていこう。という謙虚さ、そして、いい意味でも無力さを自覚することが重要だ。逆にうまくいかなかったときは、徹底的に自分のせいだと考えよう。「今回は運が悪かっただけ」、「周り(市場)がバカだから、俺が割を食った」、というように、敗因を自分以外に求める人間は次も同じ過ちを繰り返す可能性が高い

まさに、「勝ちに不思議な勝ちあり、負けに不思議な負けなし」の精神だ。他人と違うことをしろと私は言い続けているが、違うことをしているのだから当然当たれば大きいし、外すことも大いにあり得る。

当たったときは運が良かった、外した時は自分が悪かったと思うことで感情のコントロールを有効に行い、投資調査力の精度を上げることができると思う。何となく、みんながやっていることをまねるだけの「理由なき投資」にお金を使うのはあまりにももったいない。

そんなことに時間も労力も精神も使うのがもったいないと思う方は、市場(ほかのみんな)と同程度のリターンを期待できるインデックスのETFを買うことをお勧めする。何もしなくても、市場リターンが得られるし、広くいろいろな株に投資をしてくれるので分散効果も図れる非常に優れた投資商品だ。私もETFは多く買っているが、いずれもリターンは大きくないが儲かっている。

ここまででまた長くなってしまったのでいったん切ります。次のブログでは就職活動と投資の共通点から、持っておくべきマインド,そして大学での講義で受けた質問に対する私なりの回答を簡単に書いていきます。


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