また前回のブログから間が開いてしまいました。関西方面で少しワーケーションを楽しんでいたり、夏バテであまり頭が回らなかったりと、いろいろありました。すみません。
さて、ひと通り大学の前期の講義が終わりました。担当の先生と協議してどんなテーマで講義を行えばいいのかということを決めていくのですが、前期にリクエストの多かったテーマがESG投資でした。
実はESG投資は学術界のみならず、機関投資家からの問い合わせも今年は爆発的に増えており、個人的には2021年は日本における「ESG投資元年」であると考えています。
そんなわけで今回は「ESG投資とは何か?」ということについて深堀りしていきたいと思います。おそらくシリーズものになるかと思いますので、気長にお付き合いください。
ESG投資の成り立ちまで ~自分のお金が何に使われているのかを知る~
これまで投資において最も重要視されるのはリターンであった。極端に言えば自分の金が何に投資されて、どうやってリターンを上げているのかなんてどうでも良く、預けた金を増やして返してくれれば、万事OKという状況が長らく続いた。
しかし「量(投資リターンの高低)」だけを追い求めた結果、劣悪な企業にも債券投資や株式投資などを通じて事業資金がわたり、公害や大気汚染、森林伐採、生態系の破壊などの環境問題、劣悪な雇用環境、労使問題などの社会問題、そして法令違反、粉飾決算、リコール、会社の私物化などの企業統治のあり方を問うような問題が噴出した。
時代は変わり、投資家の世代が代わり、世の中の関心は「量」だけではなく、「質(投資リターンの源泉)」にも広がってきた。
今では投資家は自分たちの投資資金がどのような企業の投資に使われているのか、投資先企業はどのような事業を行っているのかということにも関心を持っている。自分たちの投資資金を通じて、環境に配慮された製品が作られ、環境保全に役立てられているのか、非人道的兵器が作られ、日々人殺しの役に立っているのかでは、同じ水準のリターンを享受できるような場合であっても、その意味するところは大きく異なる。
このような投資家からの関心の高さを反映されて出てきた概念がESG 投資である。
ESG投資とその目的
ESG投資のESGはそれぞれEnvironment(環境)、Society(社会)、Governance(企業カバナンス)の頭文字をとったものだ。
つまりESG投資とは環境、社会、企業ガバナンスの観点から良い取り組みを行っている企業に投資をしようというものだ。このようにESGの観点から優良な企業を応援するという意味合いでESG投資が世界的に意識され始めたのが、今から約10年前だ。
ではE、S、Gそれぞれにおいて優良とされている企業の取り組みはどんなものがあるだろうか。
企業の環境的な取り組み
・プラスティック製のストローから紙製のストローに変えると発表したカフェ・チェーン
・燃料消費率が良い車を開発した自動車メーカー
・自社工場の電力源を化石燃料から再生可能エネルギー設備に
企業の社会的な取り組み
・原料調達におけるフェア・トレードの徹底
・貧困問題の解決など事業を通じた社会問題の解決努力
・交通渋滞を解消するような交通機関のサービス拡充
企業のガバナンス
・女性取締役の積極的な活用
・法規制の順守の徹底およびより厳格な社内規定の設定
・情報公開や開示の徹底
このような取り組みに関して、企業も今は積極的に広報活動を行っており、テレビCMなどで皆さんも観たことがあるのではないだろうか。
さて、ESG投資も投資である限りにおいては、もちろん投資として意味をなさなければならない。つまり、高位な投資リターンを得られないと、どんなに崇高な事業活動をしていたとしても、投資家の関心を惹きつけにくい。次回はなぜESG投資が投資として成り立つのかについて書いていく。