会社の創業者になるということの方法とリスクを考える


働かないで金を稼ぐ方法の一つとして会社の創業者になることを挙げた。会社の創業者とは何なのか、そしてなぜ会社の創業者は働かないで済むのかについて考える。働くのではなく、仕組みを作ること。それが創業者の利益をもたらす。

起業するだけなら難しいことではない

自分が働かないで稼ぐ方法の一つとして会社の創業者になるというものがある。いわゆる「起業する」というものである。

自分で会社を興して法人を持つというのではなく、どこの企業・組織にも属さない「フリーランス」になるだけなら、今、この瞬間からなれる。なぜならフリーランスになるのに何の行政手続きもいらないからだ。

会社を興す場合、例えば株式会社を作るとなると、必要な手続きがいくつかあるが、それさえクリアすれば起業自体は完了する。「必要な手続き」とは法人登記をする、会社用の銀行口座を作るなど、行政手続きおよびそれに付随した手続きである。「株式会社は1円から作ることができる」などと言われているがこれは半分正しく半分間違っている。確かに会社の資本金は1円からで良くなった。ただし、前述した「必要な手続き」には25~35万円ほど必要となる。したがって、厳密には株式会社を作るには数十万円必要であるというのが実態だ。

株式会社など、会社の興し方に関しては、専門の解説本があるのでここで詳述はしない。関心がある人は自分で調べてほしい。ここではなぜ会社の創業者になると働かなくても稼げるようになるのかを考えていく。

資本主義は「資本家」と「労働者」に人々を二分する

資本主義経済は社会を「資本家」と「労働者」に二分する。「働いて金を稼ぐ」人は労働者であり、会社の創業者になるということは労働者ではなく資本家になるということである。資本家とは、自身は事業に必要な資本(場所や設備、原材料など)を提供して労働者に働かせて、金を稼いでもらい、対価として賃金を払う。自分の手を動かすことなく、「儲けの仕組み」を作ることで、だれか別の人(労働者)があなたのために金を稼いでくれる。

これだけ聞くと、資本家がなんとも楽なものに感じるかもしれないが、それは違う。事業に必要な資本を準備するには相当程度の資金が必要となるし、「儲けの仕組み」を考えることは「言われたとおりに手足を動かして働く」労働者よりもよっぽど難しい作業だ。「儲けの仕組み」がうまく作用しなかったら、準備した資本は無駄になってしまう。多くの人が起業を夢見つつ、起業に踏み出せないのは有効な「儲けの仕組み」を考えることができないからである。

資本家になることのリスク

 先ほど、資本家になるには設備、原材料、場所などが必要であることを話した。当然これらには金がかかるし、人を雇うとなると賃金も発生する。これらの資金を拠出するとなると短期的には収入よりも支出のほうがかさむようになる。それらを自身が考え、築いた「儲けの仕組み」で補い、中長期的に黒字化へもっていかなくてはいけない。理屈はわかっても実現するのは難しい。赤字が続けば、モチベーションも「儲けの仕組み」に対する自信も次第になくなっていき、気か付けばせっかく貯めた(準備した)資金は底を尽き、最終的には労働者に戻ってしまう。

資本家になるリスクは不安定な収入、将来に対する不安やストレス、そして初期出費が大きいのに、回収までの期間(初期出費を上回る黒字化)がみえない、最悪回収さえできず時間と金、そして何より自信を失って労働者に逆戻りすることである。

こうなると「機会費用」は非常に大きい。「機会費用」とは「実際に選んだものとは別の選択肢を選んでいた場合に得られたであろう利得」と考えることができる。例えば手取り30万円の仕事を捨てて、これまで貯めた500万円を元手に事業を始めたが、1年後に資金500万円も底を尽き、あえなく事業を閉鎖した場合を考えてみる。

この場合、失ったのは事業用資金500万円だけではない。「もし仮に手取り30万円の仕事を続けていた場合に得られたであろう給料360万円」も失ったことになる。そうなると実質的には860万円を失ったことに等しくなる。今就いている仕事の収入が多きれば大きいほど、これを失って起業をした時の機会費用は大きくなる。金銭的なもの以外にも、1年間分働いていた場合に得られた人的ネットワークやキャリア、業務経験など、目に見えないものも失っていることも忘れないでほしい。

このようなことを考えて、起業を考える99%の人は踏み出せない。そして踏み出した1%のうちの多くが、事業を閉鎖することになる。

資本家になるというのは、手続き上は容易ではあるが、事業として成功するのはかくも難しい。

大勝ちを狙わずまずは小さく始める

働き方改革が意識されている昨今、普通のサラリーマンであっても、副業・複業を許可、奨励する企業や徐々に増えてきている。本業と違うことをあえてすることで、本業に対しても新たな視点やつながりがみつけられるようになる、趣味を生かして収入を得ることで仕事上のストレスが軽減される、などさまざまな効能がありそうな副業・複業であるが、このような制度を利用することで資本家になるという体験を小さいながら始めることができ、また金銭的なリスクも低減させることができる。

まず、副業・複業であることから、本業での主収入はそのまま得られる。したがって先ほど述べた機会費用は発生しないか、発生したとしても低位に抑えられる。これだけでも起業のストレスはかなり低減されることだろう。

また本業による収入があることから、事業を始めた後の運転資金もそう簡単に底を尽かなくなる。本業からの収入を用いて追加資金の投入が可能となれば、「儲けの仕組み」も適宜適切に修正・改善ができるようになる。トライアル・アンド・エラーで何がうまくいったのか、何がうまくいかなかったのか、冷静に分析することができ、追加資金で別の工夫やうまくいった部分の強化など、起業後にも使える資金がある程度あることはそれだけで精神的な支えとなるだろう。

いきなり大きなテナントを借りて、人を雇って、最新設備をそろえて、などというように大きく始める必要はない。副業・複業であれば、使える時間はせいぜい平日の本業の終業後数時間プラス週末2日間程度であろう。この限られた時間の中で大きく始めることは体力的にもきついし、本業への悪影響を与える可能性がある。とにかく小さく始める。自宅の空きスペースで、パソコン一台で、趣味の延長として。なんでもいいから、「儲けの仕組み」が確立していないうちは、トライアル・アンド・エラーで小さな失敗を繰り返すことが重要である。その中から見えてくるもの、見えてこないものがあるだろう。あまりに自分に向かないことなら無理して資本家になる必要もない。適性なども見極めながら、少しずつ「儲けの仕組み」を考えていくのが良い。

実際に初めなくては絶対に見えない世界がある

どれだけ起業のハウツー本を読み、どれだけ成功した経営者のサクセス・ストーリーを理解したところで、あなたが資本家として成功することはない。実際にやってみること。とにかく自分の手を動かしてあれこれ試すこと。そして失敗すること。失敗を分析すること。何がだめだったのが、どうすれば防げるのか。ハウツー本にもビジネス書にもあなたの失敗の原因も成功の秘訣も載ってはいない。なぜならあなたの事業はあなただけのものであり、あなたの「儲けの仕組み」はあなただけのものだからである。とにかくやる。小さく始め、小さな勝利を目指す。いきなり年商何千万円なんて目指さない。月1万円得られれば良いではないか。月1万円を月2万円にできれば良いではないか。

資本家といいつつ、小さく始めたあなたは資本家であり、労働者である。自分の「儲けの仕組み」が実際に機能するのか、あなた自身が労働者となって試さなくては誰が試してくれるだろうか。誰がそんなところで働きたいと思うだろうか。「働かなくても稼ぐ」道は長く険しい。しかしそれは楽しい道でもあるはずだ。週末に自分だけで月1万円稼いでいたのが月10万円になったら、バイトを雇ってみるのもいい。ここでも小さく広げる。いきなりバイトを何人も雇うようなことはせずに、平日に数時間働いてもらう。時給1000円で1日3時間、週2回でいいではないか。バイトに払うのは月2万4000円。それで月10万稼げたらあなたは「何もしないで」7万6000円稼ぐことに成功した。遊んで暮らせるほどではないが、楽しい週末を過ごすことくらいはできる。

人が金を払ってでも欲しいと思えるほどの得意分野で力試しをする

では「儲けの仕組み」とは何だろうか。正直にそれは私にはわからない。あなたにしかわからない。あなたが人から金を取ってでも需要があると思える得意分野は何だろうか。野球は好きだが野球を実際にプレーしたことないあなたが、野球教室を開いて、人がそれに金を払「って来ようと思うだろうか。来るわけがない。絵心のないあなたが楽に稼げると聞いてライン・スタンプを作って売れるだろうか。売れるわけがない。あなたが得意なことは何だろうか。これの知識・経験・技能だったら誰にも負けないと思えるようなものは何だろうか。ニッチなもので良い。小さく始めようが大きく始めようが、「人から金を取る」という仕組みは変わらない。「人が喜んであなたに金を払うもの」は何だろうか。それを考え抜いてほしい。そして、それをどう「儲けの仕組み」に落とし込んでいくのか。自分の手足を動かさない資本家はその分頭を十二分に働かせる必要がある。

「起業するのは楽」、難しいのは「何で起業するのか」

冒頭で「起業自体は行政手続きさえすればだれでも容易にできる(またはフリーランスの場合にはする必要もない)と述べた。起業するのはいとも簡単な作業である。ここまで読んだのならわかってもらえると思うが、「何で起業するのか」、「人は自分の何に金を喜んで払ってくれるのか」そして最終的に「人に任せても金が稼げる『儲けの仕組み』はどうやって作れるのか」ここまで考え、失敗を繰り返し、実現できるかは技能的、精神的、そして財政的に非常に難しい。だからこそ、本業というセーフティー・ネットを確保しながら小さく始めることが重要である。

資本家の第一歩として、「自分の何に人は喜んで金を払ってくれるのか」を考え、目標を「月1万円」にして考えてみてほしい。

0円(構想段階)から月1万稼ぐことができれば、月1万円を月10万円にするのはそんなに難しいことではないだろう。「最初の1万円」があなたを「労働者」か「資本家」かを分けることになる。


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