「投資家」とはその名の通り、「何か資産を生むものに資金を投じて、そこからの収益(リターン)を得る方法で稼ぐ人」のことである。「資本家」と比較してより一層少ない元手で始めることも可能であるし、自分の好みに応じて投資先も様々なものから選ぶことができる。ここでは、「投資家」とはなにか、どうやったらなれるのか、そしてどのようにして「働かなくても稼ぐ」を可能にするのかをみていく。大事なのは「早く始めること」、そして「長く続けること」である。
投資家になる方法
前回の投稿「3.会社の創業者になるということの方法とリスクを考える」で会社の創業者(資本家)になる方法を考察した。今回はもう一つの「働かなくても稼ぐ」方法、「投資家になること」について考えてみる。「資本家」に手続き上なるのは簡単だが、最初は自分で手を動かして働かなくてはいけない点、「儲けの仕組み」を考えなくてはいけない点など、やらなくてはいけないことが多い。その上、その事業を持続させるには相当程度の資金および時間も必要となる。「投資家」になるのは「資本家」なるよりも一層容易であり、手続きも初期費用も低位に抑えられる。世の中に自分で事業を始めた「資本家」よりも「投資家」のほうが多いのもここに理由がある。ここでは主に伝統的資産(株式、債券、通貨など)の投資家になる方法を記載する。伝統的資産のほかにも不動産やコモディティなど、非伝統的資産への投資方法についても今後書いていくのでそちらも参照してほしい。
伝統的資産の「投資家」になるには、まずは証券会社に証券口座を開設する必要がある。解説するには銀行口座や住民票など必要なもの・書類があるが、どれも1日あれば準備できるし、証券口座の開設自体も1~2週間あれば手続きは完了する。証券会社から開設完了の連絡が来たらあなたは晴れて「投資家」の一歩を踏み出したことになる。
今、簡単に「証券会社に証券口座を開設する」と話したが、どこの証券会社に口座を開こうと必要な手続きやプロセスに大きな差はないので、取り扱い資産(国内株以外にも投資したい場合は外国株取引のカバレッジ(カバー範囲)、取引画面の見やすさ、サービスとして提供されるレポート等の充実さなどについて自分の好みのものを選べばよい。またそれぞれの証券会社によって得意(強み)としているサービス内容は違うのでそれらを比較して選択するのも重要である。得意なサービスとしては例えば取引手数料の安さ、取引画面の見やすさや使いやすさ、外国株式のカバレッジなどが挙げられる。先ほど伝統的資産として「通貨」を挙げたが、ここではレバレッジ(保有する資金以上の資金を用いて取引が可能となる)をかけたFX取引は投資ではなく、投機の意味合いが強いと考えるためここでは投資の範囲外とする。ここでいう「通貨」とはあくまで「外貨建て預金」などである。
自分の好みに合わせた投資家像をイメージして、投資先を選ぶ
晴れて証券口座を開設することができたら、あとは好きな資産クラスを買うだけである。各資産クラス(株や債券など)の特徴については別の機会で詳述するとして、ここでは大枠として株、債券、外貨建て預金の比較をしていきたい。
普通株式 | 債券 | 外貨建て預金 | |
必要な元手 | 少額~高額 | 高額が理想 | 少額から可能 |
手続きの容易さ | 易 | 難 | 易 |
リターン | 高 | 中 | 低 |
リスク(標準偏差) | 高 | 中 | 中 |
収益化までの期間 | 短期~長期 | 中期~長期 | 短期~長期 |
理想的な投資期間 | 長期 | 中期~長期 | 中期~長期 |
一般的な投資のハウツー本とは若干違う見方かもしれないが、上記の表が大枠としての株と債券の比較である。次に投資家になることのリスクについて考えていく。
投資家になることのリスク
投資家になることの主要なリスクは1)ある程度の資金を変動する状態にさらす必要があること、2)一定期間換金できないことである。
まず「1)ある程度の資金を変動する状態にさらす必要があること」について説明する。資本家同様投資家も初期資金が一定程度必要である。今でこそ数百円、数千円から投資をスタートさせることもできるが、投資資金が少額の場合はリターンもごく少額となる。大きな額を動かす必要がないという点では良いが、リターンが数円単位だとさすがに投下する時間に対して割に合わない。ある程度のリターン(数千円程度)を望むのであれば最低でも10万円、できれば50万円くらいあるのが理想である。
投資家のリスクは当然、投資した額を下回ることである。ある株式を50万円分買ったとして、その後、その株式の価値が45万円に下がった場合、あなたの評価損は5万円となる(ここで「評価損」と書いたのはあくまで株を実際に売却しない限り実際に損(これを「実現損」と言う)をしたわけではないからである)。銀行預金なりタンス預金で50万円寝かせておけば50万円は明日も明後日も50万円でありつづけてくれる(銀行預金であれば1年後には雀の涙ほどではあるが金利も付く)。株式の場合、50万円は刻一刻とその価格が変わる。1分後には51万になっているかもしれないし、その3分後には48万円になっているかもしれない。このようなリスクのことを「価格変動リスク(ボラティリティ・リスク Volatility Risk)」という。前述した「短期的な上げ下げに一喜一憂しないのが重要」というのはここにある。値動きにいちいち反応していると精神が持たなくなり、ほかのことが手につかなくなる。Buy and Hold(買ったらあとは持ち続ける)またはBuy and Forget(買ったらあとは忘れる)くらいの心持でいるほうが良い。
もう一つのリスクは「2)一定期間換金できないこと」である。これを「流動性リスク(リクイディティー・リスク Liquidity Risk)」という。あなたが銀行なりタンスなりにおいてある50万円はあなたの好きな時に自由に引き出すことができる。ATMへ行けば、もしくはタンスを開ければいつでもあなたの50万円はそこにある。一方、株の場合50万円分の株を売却した場合、あなたの証券口座にお金が戻ってくるまでに2日間かかる。債券や投資信託の場合にはそれよりもより長い時間が必要となる。このように「好きな時に好きなだけ換金できない」というのが投資家のリスクとなる。
投資に関するリスクに関しては独立した投稿で改めて考察していきたい。ここでは主なリスクとしてボラティリティ・リスクとリクイディティー・リスクについて簡単に紹介した。
リスクとリターンは表裏一体の関係にある。リスクを取るからリターンが付いてくる。今後も投資に関しては資産クラス別など、トピック別に紹介していくのでそちらも参照してほしい。