大学院留学のすすめ その3 -海外大学院という選択肢編-


これまで2回に分けて、日本の大学とアメリカの大学の特徴、良さと悪さをみてきた。日本の大学の良さは自由であること、悪い点は自由すぎるところ、アメリカの大学の良さは厳しいところ、悪い点は厳しすぎるところ、という風にそれぞ れひとことで言うことができるだろう。

「大学院留学のすすめ その3」となる今回で(やっと)海外大学院について触れたいと思う。日本の自由さ、モラトリアムの中でこれからの人生について考え、アメリカの大学院でそれを昇華させる、そんなキャリアパスを考えてみたい。

若い時は自由であるべき

君たちはこれまでの人生で何かと縛られてきただろう。部活に入れば先輩や顧問に怒られ、家と学校では勉強しろといわれ。そんな中でも挫けずにめげずに君たちはしっかりと学び続けたことで、いわゆる「良い大学」に入ることができただろう。

これまでの窮屈さから解放されて、せっかく良い大学に入ったのに、講義はさぼり放題、遊び放題、いつの間にかなんで大学で学んでいるんだろうなんて疑問に思ってしまっている人もいるのではないだろうか。それは非常にもったいないことである。それまでの学びや努力が大学4年間かけてジワリジワリと消えていく。そんな大学生活にはしないでほしい。

4年間でしっかりと学んでほしい。そして考えてほしい。「学んでほしい」というのは別に講義に出て、テストで良い点とって、ということだけを言っているのではない。いろんな経験をして、たくさんの人と出会って、そこから視野や考えを広めるという体験をしてほしいということである。そして「考えてほしい」。これまで君たちは親なり、先生の言うことを聞いていればよかった。彼らが敷いてくれるレールの上を、脱線しないように走っていれば、快適なフィールドへと導いてくれた。でもここからは違う。何ができるのか、何をしたいのか、何をしたくないのか、自分自身で考えていかないといけない。ここからはレールのない人生だ。君の目の前にあるのは未開の地だ。自分で地面を整備して道を作っていかないといけない。こっちの道じゃないな、と思ったら修正をしたり、来た道を少し戻ってみたり。試行錯誤しないといけない。「良い大学に入って、良い会社に入って」という時代では今やない。「良い大学」にするかしないかは君次第だ。君の行動一つで「良い大学」になるかもしれないし、「学歴だけを得るための4年間の居場所」なだけになるかもしれない。そして、これまでみんなが信じて目指していたような「良い会社」なんてものはない。世の中の会社がすべてブラック企業だといっているわけではない。大手=良い会社というわけではないということだ。大手に入ってうつ病になったり、自殺する人もいれば、名前は聞いたことないけど、楽しそうに働いてるなーという人もいる。君たち全員に当てはまる「良い会社」なんてないということだ。そもそも会社に入ることが良いのかどうかさえ分からない。副業やフリーランスとして活躍している人だっていくらでもいる。「財閥系商社に入れば人生安泰だ」なんていう風に考えないほうが良い。入社後死ぬほどその会社が合わなかったらどうする?毎日、嫌だ嫌だと思いながら60歳まで40年間働くのだろうか。転職してほかの道を探すのだろうか。大手を辞める覚悟があるだろうか。人生は何が起きるかわからない。学生時代に考えていた理想と社会人になってからの現実のギャップがないなんてことのほうが珍しい。

だからこそ、日本の大学の4年間、自由な時間を使って学び、考えてほしいのだ。学ぶチャンスも、考える時間も、何か面白いことをやってみる余裕も、人との触れる機会もいくらでもある。日本の自由な学生生活の利点を存分に生かしてほしい。

先のブログで、日本では「大卒=エリート」という等式はすでに成り立たないという話をした。ではこれからはどういう等式が成り立つかというと「院卒=エリート」だと思う。4年間しっかりと考えたら何かしらの道筋が思い浮かんでいることだろう。その思い浮かんだイメージをより深めるために大学院に行くというのを一つの選択肢として考えてほしい。もしくは、一度就職をしてみる。興味のある仕事に就いてみる。そこでの経験を通して、「もう少しこれを学びたいな」というものが出てくると思う。そう思ったら、大学に戻る良い機会である。マーケティングの仕事をしてみたけど、もっとマーケティング理論について知りたいなとか、営業してみたけど、もっと自分が扱っているモノについて深く知りたいなとか。もしくは、営業をやってみたけど、自分はもっと違うことをしてみたいな。それでも良いと思う。何かを始めるのに遅すぎるなんてことはない。

特に日本では大学卒業後も学びを続ける人が少ない。海外であればMBAを取ったり、専門職大学院に行ったり、30代、40代になっても大学生に戻るような人もいるのに、日本では大卒後、定年までほぼ再学習の機会がない。22歳までの知識でその後40年間を生き抜くようなものである。これでは、時代の進歩についていけなくなる。常に自分の知識もアップデートを続けていかないといけない。そのための再学習の場が大学院である。

僕がことに「海外」大学院をお勧めする理由は日本の大学院は社会人教育の場としてまだ、万全ではないと思うからだ。先に述べた通り、社会人が大学に戻るというキャリアパスは日本ではまだ珍しい。「せっかく会社に入ったのに辞めて大学に戻るなんてとんでもない!」という価値観が依然強い。だから、大学側も社会人教育のためのプログラムが少ない。「生涯学習」と呼ばれる社会人向けの講座も「囲碁入門」だったり、「生け花教室」だったり、趣味というかすでに退職したおじいちゃん・おばあちゃん向けの内容が大勢ではないか。

その点、海外(といっても私が知っているアメリカに限るが)では専門職大学院がかなり整備されている。マーケティング、広告、営業スキル(交渉術)、経営理論、デザイン、映像作品、語学、建築意匠、都市開発など、あなたのやりたいこと、興味のあること、もっと理解を深めたいと思っていることに近いプログラムが必ずみつかると思う。大学4年間で学びきれなかったことを大学院で学ぶ。それに文系も理系も、社会人も学生も関係ない。これからはそういう時代になると思うし、そういうトレンドになるべきである。

これを読んでいる君たちにはぜひ「学びというのは大学4年間が最後というわけではない」ということをまず知ってほしい。

ここまでで長くなってしまったので、次のブログでは「留学のリアル」について書いていく。


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