久しぶりの連投でございます。
やっと、ブログのネタをしっかり探せるくらいには体力的に回復してきたのが大きいですね。
今年というか、特に3月に入ってから金融メディアで連日のように取り上げられている、プライベート・クレジット投資における個人投資家からの解約殺到問題について考えていきたいと思います。そもそも何が問題なのかということがわかれば、その先に投資機会あることがわかるでしょう。
プライベート・クレジットとはなにか
まずプライベート・クレジットとはなにかということですが、プライベート・クレジットとは、未上場の中堅企業が発行する、変動金利で流動性が(ほとんど)ない事業ローンです。
呼び方としては、プライベート・クレジットのほか、
プライベート・デット
プライベート・シニア・ローン(デット)
ミドル・マーケット・シニア・ローン(デット)
など投資会社によって呼称は多少変わりますが、指しているものはだいたい同じです。要は流動性のない企業への貸付(ローン)だということです。ここではとりあえず、「プライベート・クレジット」と統一して呼ぶことにします。
詳しく話しだしたらきりがないですが、特にリーマン・ショック以降、バーゼル規制などで銀行による企業への貸付に関する規制が厳格化され、以前ほど銀行が企業への融資がしにくくなりました。そこで2010年に頃以降から特に登場してきたのが投資会社(新聞報道的には「ノンバンク」)が銀行の代わりとなって企業に貸し出す、プライベート・クレジットです。銀行は以前ほど企業に融資がしにくい、でもお金を借りたい企業は多く存在する、ということでこの穴埋めをするために登場したのがプライベート・クレジットなわけです。リーマン・ショック以降の規制強化で~とお伝えしましたが、銀行以外による貸付自体は昔からありましたのでそのへんは多少ぼやっとして理解してもらえますと幸いです。
米国であれば社債市場も発達しているし、バンクローン(文字通り銀行(バンク)が行う貸付(ローン))市場もありますので、なんでプライベート・クレジットなんて方法でわざわざノンバンクから借りる必要があるの?と疑問に思われるかもしれません。
プライベート・クレジットの借り手は「まだ社債市場やバンクローン市場での資金調達ができない、中型・中堅企業」です。
プライベート・クレジットの借り手(発行体)
明確な定義があるわけではないので、線引が難しいところですが、米国のプライベート・クレジットの発行体の規模感は概ねEBITDAが1億ドル~10億ドル、くらいの企業です。日本円で考えると十分にでかい企業ですが、米国ですとこの程度の企業は履いて捨てるほど存在するので全然中堅企業です。ちなみに先程の呼称のところで言及した「ミドル・マーケット」は「中堅」を意味します。
信用格付けで言うと非投資適格級(BB+以下)となります。もっといえば、どうせパブリック市場(流動性のある取引市場)で資金調達をするわけではないので、格付会社にわざわざお金を払って信用格付けの付与も行っていないような企業です。そういう意味でもやはり「中堅企業」と呼ぶにふさわしい企業ですね。
プライベート・クレジットによる資金調達を行う理由
では、こういう中堅企業がなんでノンバンクを通じて、資金調達を行うのでしょうか。この調達資金使途は何なのか考えていきます。
未上場の中堅企業というのはプライベート・エクイティ(PE)ファームの格好の投資対象です。企業の持ち分(未上場株)を創業者から買い取り、自分らで企業価値を向上させてより大きな未上場企業投資を行う(メガPEやグロースPE)PEファームに売ったり、株式上場を通じて持ち分の株式を売却したりするなどして、エグジット(リターンを実現)させて行く投資会社です。すでに中堅規模にまで成長している企業なので、競合他社の買収を通じて横展開や、類似事業へのビジネスの拡大を行い事業規模を大きくさせ(≒企業価値を向上させ)、大体3~5年でのエグジットを目論むわけです。
プライベート・クレジットによる資金調達も基本的には上記のような買収に充当される資金です。このようなお金を借り入れて、企業買収を行い、事業成長を図る(事業規模を拡大させる)手法がLeveraged Buyout(LBO)と呼ばれるものです。
プライベート・クレジットの投資妙味
ここまでプライベート・クレジットについて説明してきましたが(ここまでかなり金融知識が必要かと思いますので、すでに食傷気味かもしれませんがw)、プライベート・クレジットの投資妙味はなにかということに話を移してまいります。
プライベート・クレジットは
- 非投資適格級(ですが基本的には格付け自体の付与もない)
- 流動性ない
- 取得できる財務/事業情報が限定的
- 案件ごとにローンのストラクチャーが違う
ということで、利回りがモリモリに乗れる特性を有しております。
それぞれ
- クレジット・リスク・プレミアム(返済されないリスクに対する追加的な利回りの上乗せ)
- 流動性プレミアム(売りたくても売りたい値段で売却できないリスクに対する追加的な利回りの上乗せ)
- 情報の非対称性プレミアム(財務情報など取得できる情報が限定的であるリスクに(以下略))
- 複雑性プレミアム(ローンのストラクチャー(融資条件など)が複雑かつローンごとに条件が違うため横比較がしにくいリスクに(以下略))
というリスク・プレミアム(享受するリスクに見合うだけの追加的な利回りの上乗せ)が得られるわけです。もっと細かく踏み込めばもっと多くのリスク・プレミアムが挙げられます。
とはいえ、コロナ禍前まではどちらかというとニッチな、地味な資産クラスでしたが、2022年以降の高金利環境、パブリック資産クラスでのクレジット・スプレッド(上乗せ利回り)の縮小を背景に、その高利回り性が投資家の関心を高め、一躍人気な投資商品となりました。
なんかここまで書いてきて、そもそも債券とかローンの支払金利(固定でも変動でも)の決まり方をちゃんとお伝えできていない気がしますので、またそれは近い内に別の機会に行います。
ベース金利の上昇も相まって、プライベート・クレジットは一時期(というか機関投資家の間では今でも)人気を博しまして、機関投資家のみならず、富裕層(個人投資家)向けの商品も出てきたわけです。富裕層からも莫大な投資資金が集まり、それが今回の問題へと繋がっていきます。
ちょっとここまでですでに長くなってしまったので一旦ここらで切ります。
このままだと3部構成くらいになりそう。


